生徒会の苦悩


これの第三者視点


会長と副会長は仲が良い。


うちの学校は生徒会役員を選挙で決めている。今期の生徒会長を立候補したのは今の会長と副会長。会長は人柄もろもろとかがよく、高い支持率があったので会長の座にすんなり座れた。それに対して副会長は見た目は堅苦しく、内面は根っからの真面目気質だから会長と天秤にかけたらすぐに上がってしまう。当然のように副会長は落選。でも会長の粋な計らいで副会長に任命された。会長を決める前に副会長が決まっていたから、本当は副会長一人のところ今期は二人いる。

そんな副会長は会長に惚れている。理由は聞かなくても分かるから聞かない。堅物な人だと思っていたのに(いや、きっとそうなんだろうけど)同性である会長に惚れるとは、恋は盲目とよく言ったものだ。副会長は見掛けによらずのムッツリではなくオープンな変態だった。副会長と言うか側近と言う肩書きの方が似合うんじゃないかと思うくらい会長の傍から離れない。

会長は何を考えているのか検討もつかない。気分屋と言うか気まぐれ屋。でも考えていることは浅いようで深く、人の為なら自己犠牲を惜しまないようなお人好し。そんな会長を副会長が制御出来ている。だからバランスはいい感じに保たれている。冗談なのかよく分からないけど副会長の悪戯に悪乗りしたりしている。本気の副会長の悪ふざけではないのは確かだった。それに知ってか知らずか会長が悪乗りするので、時折、副会長は手のひらで転がされているようにしか見えなくて辛い。

もう一人の副会長は女の子。見た目は会長にべったりな副会長みたいな堅物で、内面は外見を裏切らない人。仕事はきっちり行い、少しネジの緩い会長の縁の下の力持ち的存在を副会長二人でやっている。仕事がない時は会長と副会長のやり取りを傍観している。最初はそういうのが好きな人だと思ってたけど別にそういう雰囲気もなくて内心ほっとしているけど、もしかしたら安定のムッツリなのだろうかと思ってしまう。

そんな僕は生徒会の書記兼会計。書記の仕事と会計の仕事は多くはないので兼任している。それでも暇を持て余しているので、もう一人の副会長とトランプ遊びをしたりしている始末。趣味は人間観察。だから会長と副会長のやり取りは見ていて楽しい。勿論、見苦しい時もあるけど。会長と副会長のやり取りは最初気持ちが悪かった印象がある。だって同性同士の恋愛なんてと思っていたのに目の前で繰り広げられようとしていたのだから。でも最近は当人達が幸せならそれでいいんじゃないかと思っている。いや、幸せになってほしいと思っている。


でも、それはやっぱりいけない事なのだと改めて思った。それは僕ともう一人の副会長と七ならべしていた時だった。いつものように副会長から会長に悪ふざけを仕掛ける。仕掛けたのはキスだった。流石にいけないと会長は思ったのか悪乗りはしなかった。むしろ会長はキスする理由を聞いていた。てっきり副会長の好意に気付いていたと思っていたのに。

面白い展開に僕は目の前の副会長と視線を合わせた。小さく首を振られたので僕はハートの2を置く。部屋の真ん中で会長は呆れたような態度を取ると副会長は切り替えて仕事の話をし始めた。僕ともう一人の副会長は久しぶりの仕事が入ったと分かって会長の方へ意識を持っていった。

そうしたら会長はキスの話に時間差で悪乗りしてきた。一瞬にして部屋の空気が固まった気を感じたのか、会長は一歩身を退いた。

気まずい雰囲気の中で淡々と仕事の話が進まれていく。生徒会室で恋は生まれない。頬杖をつきながら突き出た唇を悪戯に遊んでいる会長の考えていることは分からない。

生徒の長である会長と副会長が不純恋愛をするだなんて言語道断であるのは確かで、当人達も重々承知していると思う。あんな副会長だけれど、やっぱり真面目だから陰でこっそりなんてしていないのだろうな。もう一人の副会長を横目に見れば心なしか嬉しそうな顔をしていた。

こんな展開を期待していたのか、それとも横恋慕なのか、どっちにせよこの副会長も何を考えているのか分からないな。ここでの人間観察とは楽しいものだが深入りすると何か大変な事に巻き込まれそうだと察した。

どうして僕は生徒会に入ったのだろうか、生徒会の苦悩は終わりそうにない。




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