優等な体育委員



体育倉庫はたくさんの用具が置いてある。一人で数個を持てる用具から数人がかりではないと持てない用具まである。倉庫は埃っぽく汗臭い。ここの倉庫はどこかのエロ漫画みたいな展開が起こるような倉庫ではない。勿論、その体育倉庫は掃除されている。曜日ごとに二学年の各クラスの体育委員二名が倉庫の掃除を担当している。でもどーゆー事か体育倉庫は汚い。それはみんな掃除をサボっているから。クラスの役員決めの時に最後に残るのは体育委員だ。みんな汚い場所の清掃が何よりも嫌なのだ。なったとしても掃除をサボればいいのに。自分は三組の体育委員なので毎週水曜日の放課後に倉庫の掃除をしている。好きで体育委員なのではない。役員決めの時に自分は運悪く風邪を引いて学校を休んだ。クラスのみんなは僕を体育委員に仕立てた。自分に拒む権利はなく素直に受け入れた。自分は優等生だ。学校に行っていたら学級委員長に立候補していた。それでも自分は一人で毎週水曜日の放課後に体育倉庫の掃除をしている。自分は優等生だから。クラスの体育委員のもう一人は人間の底辺でクズで碌でもない奴で馬鹿どもとつるんでいる。ソイツも勿論、掃除をサボっている。それで良かったんだ。なのに脳みそまで筋肉の馬鹿な体育教師がソイツに体育倉庫の掃除をやらせた。委員の仕事ではなく制裁として。そうして今日の放課後に体育教師監視のもとの掃除が始まった。掃除をしていたらソイツが体育委員である事実を知りソイツを叱った。その最中に放送で教師は呼び出され体育倉庫に残ったソイツと自分。教師がいなくなった途端にソイツは愚痴や不満をべらべらと喋り始めた。自分は何も言わず箒で床を掃いていく。突然ソイツが話し掛けてきた。自分は優等生だから応える。ソイツとの会話は成立しない。くだらない。自分がそう言うとソイツは目の色を変えて自分に両手を伸ばして飛び掛かってきた。伸びた両手は自分の首を掴む。力がこめられていく。必死になった。こんな処で死んでたまるか。自分は優等生だ。畳まれた体操マットに押し倒される。なんだこれはエロ展開だろうか。こんなエロ展開は誰も望まないし得しない。男同士のエロ。不良に押し倒される優等生。我にかえればこれはエロ展開ではないことに気付く。自分の死に際だ。抵抗してもソイツはびくともしない。自分は体が弱いのだ。役員決めの日に学校を休むくらい。でもソイツはサボりだ。前期もソイツは体育委員だった。たまにしか学校に来ない奴。お前なんか価値のない人間だ。自分は優等生だ。自分はこれから必要とされる人間だ。ソイツの下で藻掻いた。運の良いことに男の急所に膝が入った。ソイツは自分から退けた。自分は箒でソイツの頭を叩いた。手応えはない。自分はソイツの後ろに回って近くにあった縄跳びを首にかけた。そしておもいっきり締めた。柔道の背負い投げをするような体勢で。自分の両足の間からソイツの足が宙に浮くのが見えた。藻掻いている。苦しそうでとても滑稽な姿。ソイツは自分の背中で暴れているので痛みに耐えるのが辛い。暫くすると静かになった。背中も痛くない。そしてソイツは死んだと分かった。自分は掃除に取り掛かる。案外あっさり掃除が終わったので教師が帰ってくる前に自分は帰宅する。さっき出てきた大型ゴミは人気のない廃れた花壇に埋めた。ソレは価値のない人間から地球の為の資源となったのだ。この優等生の手によって。フツフツと込み上げてくる笑いを抑えなかった。あーあ。さて、来週も体育倉庫の掃除頑張ろう。





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