すべては私によって



いいな。あなたの食べかけのアップルパイ。今度こっそり食べに行こうかしら。もしばれたら死体のふりして脅かしてやるんだから。甘い甘いシナモンの香りが私をその気にさせる。あなたの不幸が私の原動力なのよと笑う。


付き合っていた彼氏に浮気されてその場の情に流されて手首に赤の印をつけてしまった。流れる血液には母と顔の知らない父の血液が入り混じっていて常に私を生かしている。これもいつまで続くのだろうか。涙目になりながらも砂時計をひっくり返す。


いくつもの矛盾が私を押しつぶして息も出来ないほど苦しい。ずっと一緒だって約束したじゃない。私の目の前で脆く死んでいった彼は今どこにいるのよ。私を一人にしないって。もう悲しませないって。私の涙を見たくないって。全部全部指切りしたじゃない。約束は四つよ。小指を全て切り落としてあげるわ。だからお願い。せめてもう一度抱きしめて。


どうか愛を下さい。お金ならいくらでもあげます。だからどうか私に愛を、愛の、愛と精子をください。もう何も望まないから。どうか、どうか私に愛を下さい。そうして彼に出会った。


セックスしただけで別れてしまったけど、それだけで愛を感じ、彼を愛してしまった。砂時計の砂は止まったまま。手首の切り傷は瘡蓋を剥がして、もう一度傷を付け直すことにしたわ。











次はいつ会えるのかな。もしかしたら次会うまでにどっちかが死んじゃったりして。会った時に死んだふりだと思ったら実は本当に死んでいた、なんて。ばかね。いま笑うところよ。だってあなたが死んじゃったじゃない。




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