逆光スプリンター
早朝の魚市場に行った。それは行くのが日課だからだ。強いて言うならおまじないかな。とにかく行った。
あちこちから聞こえてくる声。それも大音量。この魚市場にいる人の三分の二以上が声を張り上げている。近くの海の音なんて無い。
耳が可笑しくなりそうだ。いや、もう手遅れ。次第に音が遠退いていく。気分がぽわぽわしてきた。
ニヒルな笑い。年齢偽装して買ったチューハイ片手に目蓋が落ちる寸前だ。だんだんと正気になっている気がする。
声が飽和している感覚に酔っている。それは泥酔状態。死んだ魚を横目にチューハイを呑む。最高に美味い。
ああこれから学校だ。
飲みかけのチューハイを箱詰めされた魚の前に置く。二礼二拍手一拝。きっと今日も問題ない。おまけに合掌もしたんだから。
今日も僕は優等生やってきます。
(みんなのヒーロー学級委員長)
(今日も死んだ奴を助けたぞ!)