見えないものを信じれた。


暗闇で君に触れた。指先から伝わってきたのは何かに怯え震えている事と、ほんの少し暖かい事と、泣いている事だけ。

声は聞こえないが嗚咽を押し殺して泣いているのが分かった。でも君が何故泣いているのか分からない。

私はそっと近づいた。抱き寄せようとさえした。細い腰に腕を回そうとしたら君は私の手を払い落とした。瞬間的な手の痛みより拒絶された君の行動が深く痛む。


「もう…いやよ……」
「だめ、私から逃げないで」


強引に腕の中へ君を収めた。君は嗚咽を隠さないで暴れだした。私は必死になって君を抱き締めた。ついに雄叫びに近い声をあげはじめた君に私は為す術を無くして君を離してしまった。


「嫌なの!嫌嫌嫌嫌嫌嫌イヤイヤイヤ」
「わからないわ…なんで…なんで…」


暗闇で君が膝から落ちた音がした。噎び泣く声がやけに響いて心が軋んだ気がした。私は手探りで君を探したのだけど君は見つからなくて。

私は泣いた。声をあげて泣いた。頬を伝う涙は止まることを知らなくて。濡れていく足元に私はしゃがんで触れた。温かさの中に冷たさがあった。

それを辿っていけば何かに触れた。それは君で、酷く冷たくなっていて。それでも確かに君はいて。私は久しぶりに笑えた気がする。



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