残念な彼氏



「生理後だから綺麗だね」


そう言ったのは私の彼氏。容姿や性格、声まで良いのに思考が人とは違ういわゆる変人。私は額を押さえて溜め息を吐くので精一杯。せっかく生理が終わって一週間お預けだったセックスをしようとしているのに、この台詞。彼に一目惚れしたのは私。告白したのも私。彼の可笑しな部分は惚れた弱みでカバーしているのだが、もう一度彼を見ると真顔でいたので呆れ返り言葉も出ず、また溜め息。

今日はせっかく良い声している彼氏がいるのだから「言葉攻めして欲しい」と頼んだ。そしたら彼なんて言ったと思う?


「きょーは、ままのおっぱいがのみたいでちゅ」


言葉攻めを履き違えている彼に私は涙した。彼は楽しそうに私の胸にしゃぶりついて母乳を飲むように吸い上げてくる。

喘ぐ私に彼は「ままのみりゅくおいちー」と笑顔で言った。最早幼児返りと言うより、赤ちゃんプレイになっていた。


「もういい!もうやめて!」


彼の両肩を押して引き離した。すかさず手元のシーツを引き寄せて裸体を覆った。彼は何度も瞬きを繰り返している。


「これからが楽しいんでしょうがっ」
「ふざけないでよ!」
「本気だよ」
「ひゃ、っ」


裏声だった彼の声が低くなったて思ったら視界が反転。見慣れない天井と彼。耳まで赤くなるのを自覚したので、慌てて逸らした視線。彼の熱い吐息が首元に当たって反応する下半身。


「結構俺、ヤバイんだって…」
「……ず、ずるい」


甘く低い声が脳から腰、それに爪先まで響く。正面を向けば無駄のない綺麗な顔が私を捉えていた。


「……ばか、すき」


首に腕を回して唇を重ねた。


「ぼくも、まま、だーいしゅき」



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