なくなって



「なくなって」


彼は僕の頭を優しく撫でる。大きくて温かい手のひらに涙が浮かんだ。


「もう、なくなって」


抱き締められた時に耳に優しく囁かれた。甘ったるい声で僕が女の子だったら確実に恋をしていた。


「ほら、なくなって」


頬に涙痕がみずみずしくついた。僕は彼に笑いかけようとしたが筋肉が強張って上手く笑えてない気がした。


「うん、わかった」


彼から離れてフェンスを乗り越える。振り替えると彼は心から笑っているようだ。


言葉って残酷だね

僕は空に思い切り飛び込んだ。



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