舌ピアス



「ん…ン、」


触れるだけのキスから、角度を変えて何度もすると、どんどん深くなって手を首に回して貪るようになった。生暖かい舌が押し割って入ってきて、舌を絡めて歓迎した。

ごろごろとするものが、絡めるのを邪魔してくる。不快な気分に一気に落とされ腕から力を抜いて離れた。


「なんやの、きゅうに」
「ピアス付けたままじゃいや」


彼はえぇー、と不満を口にした。目立つ金髪は首まで伸びていて、舌ピアスの所為で呂律が上手く回っていないのでただの馬鹿にしか見えない。でも残念な事に私と釣り合っている。つまりは私も馬鹿なのだ。


「はずすのめんどーなんやて」
「こっちの身にもなってよ」


彼の口からまた不満が零れた。


「すぐあなふさがるんやて、ほんま」
「また開ければいいんじゃないの」


わざとらしく溜め息を吐かれた。お前は何も分かっていないな、そう言われたようで虫酸が走る。たまらず私も溜め息を吐いてやろうと思った。貴方は何も分かっていない。


「じゃ、きすなしでやるか」
「娼婦じゃないの、わたし」


腰に腕を巻き付かれてスカートの下から滑るように入ってきた手はいやらしく太ももを撫でてきた。僅かにそんな気分になってきた。


「しってる、だからだいじにしてる」
「それならピアス、外すのよ」


唇が重なる。いきなり舌を絡める大人のキスをする。後頭部を掴み自分の唇に強く押しつけた。離れないように自らも彼に近づいて強引に跨る。

腰から尻へと手のひらは降りてきていて、撫で回したと思ったら鷲掴みして本能が丸出しである。私も彼の長い金髪に指を絡めて熱くなっている。

ごろごろしたピアスが邪魔してくる。舌の裏側から飛び出たピアスの先端が咥内を傷つける。内側から私を傷つけるなんて酷い人だね。

こっそり濡れた下着は彼にばれたみたいで途端に彼は鼻息を荒くした。だから舌を甘噛みした。彼はもっと興奮してきた。


「ン…ふ、っ」


吐息を彼に向けて漏らして胸を押しつける。大人のふりをしているだけで、中身はすっからかんの子供なんて思う私はやっぱり馬鹿ね。

息継ぎの為に離れた唇。

焦点が合わない瞳。

いやらしく撫で回す手には眼もくれず、腫れぼったい唇に噛み付いて舌を無理矢理絡めた。唾液と空気が混ざり汚い音が鼓膜を支配する。

ゆるゆると手を頬に持ってきて、彼が出した舌に思いっきり噛み付く。白黒する彼の映る私は酷く歪んでいる。


「ん゙んんっ、ん゙ーん゙んーッ」


ギリギリ、歯軋りすれば繊維が一本ずつ切れる感覚が生々しく伝わってくる。溢れる血液は唾液と混ざって、顎をから首へと落ちる。

ついに彼は勢いよく私を突き放した。その衝撃で舌は引き千切れた。甲高い悲鳴が耳をつんざいた。

咥内に遺った舌の一部。やっぱりごろごろとして不快で、足元に吐き出した。

べちゃりと落ちた肉片、鈍く光るピアス、取り乱す彼、すべてに眩暈を覚えた。


「やっぱり釣り合ってなんかいないわ」


ヒステリックになって泣き叫ぶ彼が滑稽で、笑みを浮かべた。自分の口元についた血が誇らしくて私は一人で絶頂を迎えた。



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