無題
泣き喚く赤ん坊が煩くて、耳障りで、抱き抱えて背中を叩いていたが一時の情に身を任せて赤ん坊を床で叩き殺してしまった。
買い物から帰ってきた妻は力なく転がる赤ん坊を大粒の涙を落としながら胸に抱き、私を思いっきり殴ると家から出ていってしまった。
案外、脆かったなあ。
打たれた左頬が痛むのを自覚する私は果物ナイフを掴んで手当たり次第に物を壊してみた。
肩で呼吸すると頭は冷えていき、荒れた部屋の無様さに中指を突き立て唾を吐き出し部屋を出た。
ああ、愛する妻よ。
憐れに思うなら傷つけておくれ。
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