なやみ



あの子の手は、生えてあるだけで役目なんて、もはや果たしていない。

それなのに、なんであの子は笑えるのか、わからない。

手が使える僕が笑えないのか、わからない。

あの子は喋ることしか出来ないのに。
僕はメールを打つことが出来るのに。


「あの子は強い子なのよ」
僕の隣に来た君はすかさず言った。

「ハンデがあっても幸せそうだ」
僕は目を合わさずに言った。

「奥深いところには悩みがあるものよ」
「悩みなんてなさそうに見えるけど」

「馬鹿ね、みんな悩みはあるものよ」
「へぇ、そうなのか…」

「私の悩みは貴方に好きと言えない事よ」


僕は上手に笑えた気がした。



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