バンダナ



「えっと…コスプレ?」
「ばーか、現役女子高校生よ」


行き場のない溜まった性欲を吐き出したくて一時的に出会い系に登録。場所が近くて性急にやれそうな女の子を検索させて、検索結果で一番上にいた女の子にサイト内のメールで誘ったら『黄色のバンダナを目印に11時、駅前の時計台の下待ち合わせ』と返事が来た。俺は速攻で黄色バンダナを買い、手に巻き付けて待ち合わせた場所に行った。着いて辺りを見回すと長い髪を上で束ねている黄色バンダナの女の子がいた。話し掛ける前にその子は俺に気付いてみたいで此方に向かってきた。そしてあの会話。


「え、ちょ、ダメでしょ…」
「誘ったのオジサンじゃん」


オジサンと呼ばれ、やけに胸に刺さった。すらっとした容姿に程よくついた肉がいやらしい。美形な顔立ち、特に形の整った唇に目が奪われる。割れて出てくる言葉は鋭く、絶対零度の冷たさ。需要のありそうな女の子だと思った。でも、オジサンは酷い。


「俺まだ23なんだけど」
「えぇ、兄ちゃんと同い年じゃん」


女の子は隠すことなく盛大な溜め息を吐き、ブレザーのポケットから携帯を取り出して何やら文字を打ち始めた。なんだか俺はすっかり萎えていた。なんかヤリにくそうだし、相性悪そうだし、学生だし。俺は渡すはずだったお金の三分の一を財布から取り出してその子に突き出した。


「なんですか、これ」
「いや、だって学生なんでしょ?」
「なんか問題ありました?」
「大有りだよ」


女の子はお金を受け取ろうとしないので先程まで携帯の入っていたポケットに無理矢理お札を詰め込んで何も言わずに立ち去った。俺はすぐに人混みに飲み込まれていった。その中で手に巻きつけたバンダナを外してポケットに無造作に入れた。

今日はもう寝よう。内ポケットから煙草を取り出して火を付けようとしたらライターからはガスしか出て来なかった。舌打ちをして違うライターを探していたら強引にマッチが視界に入ってきた。横を向けば先程女の子が長い髪を僅かに揺らしていた。


「フェラは無料よ」
「やめてくれ」


咥えていた煙草を取ってマッチを押し返す。ラブホテルの物だと一目でわかり、目を合わせると冷たく笑らわれた。


「いかない?」
「いかない」
「今日は安全日なの」
「俺は、いかない」


じゃあ、と人混みの中に歩きだしたら腕を捕まれた。突然の事で身体が強張った。溜め息をついたらまた、突然太ももを撫でられた。腕を振りほどこうと力を込めようにも背筋がそそり立ち、声を抑えるのが精一杯。変に性感が反応する。女の子の指がゆるゆる動いて呆気なくポケットの携帯を抜き取られた。


「お、おいっ」
「ちょっと待って」
「何すんだよ、返せ」
「…はい、私のアド入れたから」


素直に返された携帯の画面には知らない女の子の名前とアドレス、電話番号まで入っていた。顔をあげると静かに笑っていた。


「どういう意味だよ」
「好きになったの、ヤリたくなったらいつでも呼んで」


長い黒髪が揺れた。今の女子高生はこんな奴ばっかりなのかと本気で思って頭を抱えた。これからはそこらにいる股の緩い女を抱くんじゃなくて一人でヌくことにしようと思った。


「学生と寝るつもりは、ない」
「なにそれ、勿体ない」
「せめて卒業してないと俺が…」
「じゃあ待ってて」


話を途中で切られた。何を言い出したかと思ったら馬鹿な事を吐き出していた。たまらず笑った。


「卒業したら寝ようって?」
「ええ、だったらいいんでしょ?」
「そんなに俺とヤリたいの?」
「何度も言わせないでよ」


数歩近づいてきたので後退りしようと思ったら、頬を押さえられて唇が触れた。ほんのり化粧品の香りがする。舌が押し割ってきたので受け入れる事無く女の子の肩を掴み強引に離した。お互いの唾液が銀色の糸となり俺と女の子を繋いでいた。糸はすぐに切れてわからなくなった。


「ちょ、ちょっと」
「オジサン下手ね」
「…あんま調子のるなよ」
「でもそういうとこも好きよ」


なんとなく顔が熱くなった気がする。女の子はにこりと笑ってポケットから万札を出した。きっとさっき俺が渡した一万円だ。


「これからはお金いらないから」
「それは貰うって事か」
「抱いてくれるなら返すよ」
「じゃあ貰っとけ」


ひらりと札を泳がせてポケットの中にしまい込んだ。もう俺はどうしていいのかわからない。女の子と視線を合わせると笑いかけてきた。卒業したらって、どうせ忘れてるに違いないのになと薄く笑い返した。


「私、連絡待ってるから」
「しないよ、ばーか」


怪しく笑って長い黒髪を揺らした。黄色バンダナがよく似合っている。出会い系の手口とはこういうものなのかと思った。


「お兄ちゃん、待ってるからね」


頬に軽く唇が当たったと思ったら女の子は来た道へと戻って行った。ただ茫然と黄色バンダナが小さくなるまで見ていた。わざとらしく溜め息を吐いて冷たい夜へと歩きだした。


「フェラ位してもらえば良かった」


携帯をポケットにしまい込んで、今日のオカズはあの子にしようとポケットの中でバンダナを握り締めた。



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徠々様に相互として捧げます。
何もなくて申し訳ないです。



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