はんぐりー


お腹の虫が鳴った。

夏。容赦なく照りつける太陽は突き刺さるような光と熱を出し、足元のアスファルトはそれを吸収して熱を帯び、わずかに反射している。人の波に飲み込まれ行き場のない僕は熱に囲まれていた。

あぁ、何か食べるもの…

辺りを見回したら近くの公園にある噴水が見えた。こめかみに汗が垂れる。喉を潤したいと思った。そして水で胃を満たしてもいいと思った。公園に飲み水があるはずだ。

波に逆らい一人公園へと足を運ぶ。少し近くにきたところで噴水で遊んでいる女の子がいることに気が付いた。幼稚園に入ったかくらいの小さな女の子。僕の存在など気付かずに楽しそうに水浴びをしているようだ。

もっと近くにきたら女の子は僕の事に気付き、少しだけ大人しくなった。親は見当たらず公園から遠くないスーパーにいるように思える。僕は構わず歩き続け女の子のそばまで行く。


「水浴び楽しい?」
「うん、つめたいよ」


呂律が少し回っていなかった。女の子は手にしていた小さな玩具のスコップに水を入れて僕に向けて見せてくれる。迷わずにそれを受け取り口にした。水道水がもっと汚れたような味。一口だけで嗚咽が走りそうだ。胃は満たすには到底無理だとわかった。


「あーあ、だめだよのんじゃ」
「ごめん、喉渇いてて」


女の子はスコップを受け取るとまた水遊びを再開し始めた。足元の水をすくっては上へと水を飛ばし、上からの水しぶきを全身で浴びている。楽しそうだ。

気付くと僕は女の子の真後ろにいた。水に靴が染みて気持ちがいい。女の子は僕の存在に気付いていないみたいで楽しく遊んでいる。放った水しぶきを一緒に浴びた。そこで女の子は気付いたらしく僕の方へ向いた。


「あっ、ごめんなさい」
「いやいや、こちらこそ」


口を手で塞ぎ、頭を乱暴に掴んで足元の水面に押し付ける。暴れだず四肢は体で押さえ込み、水が跳ねるのを極力抑えた。女の子は必死に抵抗してくる。口を塞いでいた手を離して頭を押さえるのに専念させた。



女の子はあっさり死んだ。いつもより手間がかからなくて良かったと胸を撫で下ろした。人の目を気にしてみたが、みんな僕に興味がないみたいに知らん顔して歩いている。

女の子を拾い上げてベンチに座った。腕時計は十時を過ぎている。女の子の力ない腕に滴る水を舐めてみた。甘くて柔らかい。食欲がより一層増した。

少し早い昼食にしよう


遠くで虫が鳴いた。




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