赤の真実



感極まって手首にカッターを突き刺しました。

でも奥までは突き刺さりませんでした。皮膚に薄らと赤が浮き上がっただけです。私は赤を舐めてみました。腕に静電気が走ったように感じました。赤は私の喉を潤しました。どこか懐かしい味がしました。けれどすぐにまた渇きが襲ってきました。今度は勢いよく突き刺してみました。とっても痛かったです。でも死んだ私のお母さんは私を産んだ時が一番痛かったと言っていました。なので今の痛みはどうってことないのです。カッターが刺さったまま力を込めました。赤が出てきました。赤が膨らんだと思ったら割れて、腕に巻き付く様に流れてしまいます。私は丁寧に舐めとります。おいしいです。懐かしい味です。何の味なのか思い出せなくて胸が靄々します。カッターをぐりぐりと動かしました。何か堅いものに当たっているような気がしました。もう奥には進めそうになかったので、肩の方へ動かしました。涙が絶え間なく落ちます。瞬きをしたら赤が溢れる場所に落ちました。声が裏返るほど痛かったです。赤に染まる腕が内側から熱いです。何かが裂け、切れるような感覚さえあります。私はカッターを抜き取りました。頭がふらふらしてきたからです。赤はたくさんあります。口の中は唾液でいっぱいです。私は舌先を腕に差し込んでみました。頭が中で煩く騒ぎ始めました。私には関係ないです。歯を皮膚に突き立てて舐めました。吸ってさえもしました。その度に頭が煩く騒ぎます。温かくて優しい味がします。そして私は思い出しました。

「これ、お母さんの味だわ」





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -