朝の話



隣で寝ている彼女の後ろ髪を掻き上げてうなじに唇を添えた。まだ彼女は寝ている。咥内で十分に舌を湿らせてからうなじを舐めた。まだ彼女は寝ている。口を少し動かしてからうなじを吸った。まだ彼女は寝ている。もうそろそろ気付いて欲しいな。うなじに噛み付いて薄皮を引っ張った。まだ彼女は寝ている。噛み付いたまま歯軋りをする。なんとなく彼女の味がしてきた。まだ彼女は寝ている。ほんとに寝てしまったのだ。これ以上安眠を妨害するわけもなく。いや、本当は構って欲しかったんだ。まだ彼女は寝ている。名前を呼んでも当たり前のように反応はない。もう彼女は起きない。うなじについた歯形が虚しく映った朝の話。




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