ガーデン



窓から見える白いワンピースが風でなびいた。同時に顔まで隠す大きな麦わら帽子が飛んだ。それを目でおった。大きな放物線を描いた帽子は自分の庭に着地した。白いワンピースが近づいてくる。綺麗な人だった。自分と目が合う。

「ごきげんよう」

舌のない自分は小さく会釈をする。近くで息遣いを感じた。慌てて窓枠から身を退いた。彼女は自分の近くで不思議そうに笑っていた。絵本の中から飛び出してきた人のようだった。

「あら、ごめんなさい驚かせて」

顔の前で手を振ればにっこりとその人が笑った。片目があればもっと彼女を立体的に見れていたのにと、千枚通しで潰された眼球の事を思い出して目のあった場所を指で触れた。

「綺麗なお花ね、あなたがお手入れしているの?」

首を振れば彼女は柔らかく微笑んだ。スカートを押さえつけながらしゃがんで小さな花弁に唇を寄せていた。それは画になっていて美しい。

「また来ていいかしら?」

自分はただ俯いた。返事なんてできやしなかった。あいたい、でも、あうと恐がらせてしまう。ふと顔を上げたら彼女はあたかも始めっから居ないようだった。

夢のような人は夢のように消えてしまった。一輪の小さな白い花がふわりと揺れた。




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