J&D
ダニエル、ダニエル。
俺はたまにダニエルは俺なんじゃないのかって、疑う時があるんだ。ダニエル。ダニエルはいつだってダニエルなのかい?俺はたまに俺じゃない気がするよ。ああやっぱり食事なんかやめてしまおう。ちっとも楽しくないし、俺は正気じゃいられない。ダニエル、ダニエル。ああ俺の弟よ。お前は今、ダニエルか?俺はな、ダニエル。疲れたよ。
痩せたこけた頬に、落ち窪んだ眼球。口の端に出来る笑窪を見せ付けるかのように笑って見せた。兄さんは、こうして僕を困らせるのが得意だ。
「兄さん…」
僕はなるべく笑って兄さんの背中に触れた。ゴツゴツ、背骨が存在を主張している。まるっこい背中。
「ダニエル」
か細くもハッキリとした声色で僕の名を呼ぶ兄さん。これっぽっちも僕のことなんか見ていない。ぼけっ、と。部屋の扉が僅かに開いていて、そこから見える廊下の壁のくすんだベージュを、見つめて、また、「ダニエル」と言った。
「ダニエル……分かるか?おれには…もう、分からない……ダニエル。ダニエル。助けてくれ、ダニエル…」
瞳の中にいるくすんだグリーンの魚は泳がない。だから水面も揺らがない。水も、跳ねない。それが出来たらどんなに楽なのだろうか。兄さん、兄さん。僕だって、僕だって、兄さんを助けたいよ、こんなに僕にすがって、こんなに僕を頼って、兄さん。
背中を上下にさする。
こんな、気休めみたいなことしか僕には出来ないから、悔しくて仕様がない。
「ダニエル……お腹が、空いた、気がするんだ……ああ、」
細くなった指先が、頼りなく、僕のシャツに触れた。僕はそんな兄さんの手を、握り、目を見つめる。
ふらり、虚ろな瞳。僕と同じはずなのに、可笑しなことに、この眼球は兄さんのだと思えた。
「兄さん、……兄さんはきっと、このままずうっと、兄さんは兄さんだ……僕には分かるよ、兄さん。でも兄さんは、そんな言葉で…安心なんてしないんだろうね……。兄さん、だけど、だけどね、安心して、僕が隣にいる…、それと同じことなんだ……兄さん、分かるよね?」
兄さんは目を伏せた。睫毛が、揺れる。そうして、手が、僅かだが、握り返してくれた。
「兄さん…ッ」
僕は、うれしくって、うれしくって。思わず、きつく、強く抱き締めてしまった。
どんな時だって、兄さんは1人で、運命なんか忘れて、僕を求めてくれた。だから、どんな時だって傍に居てあげるから、そうだ、僕は、兄さんの傍に居よう。
「兄さん、サラダでも食べようか、ねっ、そうしよう兄さん、いいよね」
兄さんはうなだれる。額が僕のお腹に埋まる。息をすれば、それに合わせて兄さんの頭も動いた。鳩尾に落ちた、真っ黒なしこりがキリキリ痛むような、感覚。兄さんの黄色い頭が、僕の皮膚を通じて毒され変色してしまうんじゃないかと心配にもなった。
兄さん、知ってる?
傷がなくたって、身体は痛むんだよ。
鼓動と一緒に呼吸をする兄さんを、ゆっくりと放した。華奢な身体は、僕にそっくり、なのだろうかと、僕も疑う。兄さん、兄さん。
「大変だ……もう、疲れたよ……ダニエル……、」
背中に廻された腕。シャツにしがみついて、僕に身体を預けて、甘えて、いる。
「じゃあ、寝ることにしよう……兄さんが、そうしたいなら、…ね、兄さん」
髪を撫でてやれば、兄さんは、泣き笑いの顔をした。
ダニエル、聞くんだ、ダニエル。
やっぱりお前はお前で、俺は俺なんだろう。誰が決めたんだろうな。そんな、こと。でも確かに、俺とダニエルは一緒だよ。違いなんか見つけなくていい。ダニエル、ダニエル。お前は優しくて、優秀で、ダニエル、俺にはな、ダニエル。誰かが言ってた本当は、嘘だったりするらしい。ダニエル。だけど、俺とダニエルは一緒だよな、ダニエル。ダニエル、本当はちっとも眠くないんだ、本当はとっても空腹なんだ。でも、でも何もしたくないんだ、ダニエル。ダニエル、ダニエル。何でもない、名前を呼ばせて、ダニエル。何も望まない、答えも返事も理由もいらないから、ダニエル。そう、言わせてくれ、ダニエル。ダニエル。
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勝手に人の子二次創作!
七つの夕暮の歯車兎さん家のイニシャルズのジョナサンくんとダニエルくんのお話です。2人は双子兄弟設定なんです!キャラクターを上手く生かせず、本当に申し訳ないです。本家の2人は可愛さ満点です!双子兄弟好きの私にはたまりませんでした!勝手に容姿を想像しました。ごめんなさい。似てなくてごめんなさい。若干ジョナサン死にかけてますよね。キャラクターが生きてないですよね。私の力が及びませんでした。ともかく本家みてください。私はこの勢いでまたお話を書こうとしていたよ。お龍ちゃんまじ最低。
ここに上げることを許可してくれた歯車さん!ビックハート!そして可愛い子をたくさん産む偉大なる母!まさにビックハート!そんな歯車兎さんがお住みになっているのは七つの夕暮です。ぜひお立ち寄りを。
楽しかったです!
ありがとうございました!