水槽のあれこれ
こぽこぽ、と。
規則正しく酸素が送り込まれる。おかげさまで、なんとか、生きてきている。
水槽。それは透明なガラス張りの世界。確かにここでも確立しているものだった。水槽の中で生まれ、死ぬ。外の景色が見えるから、とても不愉快で仕方ない。
だって、キラキラ光って、イキイキしている世界が、目の前にあるのに、そっち側へ行けないのだから。解放されたい。抜け出したい。素敵な世界は、こんなに近くにあるっていうのに。
ドン、と。
こぶしを作って壁を叩いてみた。わずかに水が揺れた。でも、その衝撃で水槽が倒れることはない。波紋を作っただけだ。
水中は宇宙空間と類似している。ただ、こっちは脂肪がないと重力に負ける。どっちも動きにくい空間、なのかもしれない。
息苦しい。その感覚は定期的に訪れる。だから、ゆらり、酸素ポンプのところへ行く。酸素濃度が高いから、元気になる。だけど、最近は水草の匂いがきつくなってきた。きっと、掃除されてないんだろうね。
こうやって、頼らないと生きていけないのだ。自分はこんな空間から抜け出したいのだ。
こぽこぽ、と。
水はまた波紋を呼んだ。