さん、さん、ざん、

ただなんとなく目を覚ました。

まだ夢の中に意識があって、ぼおっとする現実で時間を確認したら5時を少し回っていた。

ぼやけた感覚。まばたきすら億劫に思えて仕方ない。部屋も薄明かるくて、すべてが微睡んでいるよう。衣装箪笥も輪郭しか浮かばない。

布団の片端がベッドから垂れ下がり、右足だけがひんやりと汗ばんでいた。

このまま布団を手繰り寄せて、再び寝るのも悪くはないと思ったが、目を閉じてみたところ、ただ呼吸をしているだけに思えたし、何度も寝返りを繰り返したが特に意味はなくて、起き上がった。

頭は重たく、すぐにうなだれた。本当は頭なんか空っぽの見かけ倒しだとか思っていたが、何かが入っているのは確かで、不思議な感覚に静かに戸惑った。

独り暮らしをはじめて三年目。恋も仕事もそれなりにこなしてきたつもりだ。ただ結果がイマイチなだけ。

壁にかけられているカレンダーの2013の数字を見つめていたら、なんとなく味気ないと思った。

ストレッチ性があって肌触りのいいルームウェアに手近なカーディガンを羽織った。欠伸を繰り返しては、目じりを撫でていた。

辺りを見渡せば、締め切った部屋に漂う、目に見えない空気が、たちまち負のオーラど淀んでいるように見えた。

そんな空気に酔わされたくなくて、気だるい身体を動かして部屋から抜け出した。

外は申し分ない日射しだが、すこし冷たい。花嫁のヴェールがかかったような空模様。その中でカラカラとゴムのサンダルを引き摺って当てもなく道なりに歩いてみる。

車通りもなく、静かな殺風景。灰色のコンクリからも街の冷たさが足の裏から伝わってくるような気がした。

相変わらずな街並みを暫し散策。
少し、あたたかくなってきた。

ふわっ、とする空気が日の光を浴びて、何かの粒子がきらきらと光らせて、幻想を魅せているよう。財布も携帯もなく、歯も顔も髪も、なんにもしていないのに、優しく自分を受け入れられているような気分になる。

夜中は陰気臭くて近寄らないところの横を通った。なんにもなくて、拍子抜けした。

もう戻ろう、と踵を返したら、その向こう側に、アロハシャツをきた男が、スーツをしっかりと着こなしていた男の腰に手を回して、いた。

なんとなく足が止まって、見入った。

二人はお互いの額を重ねて、熱を計っているというより、それを共有しているようにも見えた。

アロハシャツの男は心配そうにスーツの男の顔をうかがっていた。

それが恋なのか仕事なのか、よく分からなかった。



部屋に戻れば殺伐とした景色だった。薄明かるいわけではなく、セピアに染まっているようにも感じれた。

酔いが醒めない身体は、重たくて冷えを感じる暖かさ。なんとも言えない気持ちになって、カーテンを開けるのを躊躇った。










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