彼と彼女と私

静かに夜明けを待った。
今日は彼と、大阪にいる本命の彼女が一年ぶりに再会した日だった。

彼女は忙しいみたいで、お昼前に来たばっかりなのに明日の夜には大阪に帰ってしまうらしい。なんの仕事をしているかは知らないけど、私が彼とクリスマスを共に過ごしちゃうくらいなんだから、相当なんだと思う。


「この国も、一夫多妻だったら…」


いつかの女友達が言っていた台詞だった。彼女もまた二番目の人で、子供が産まれてからよくそんな事を嘆くようになり、海に身投げした。残された子供には多額のお金と引き換えに違う名字を名乗りだしたみたいで、幸せそうだ。


「馬鹿言わないでほしいわ、」


赤いルージュに細いタバコを乗せて、ぷかぁ、と煙を立たせる。


「彼女と、どうだったの?」


二日ぶりに会った彼はとても激しいセックスを要求してきた。前戯もままならず、たいして濡れていない蜜部に潤滑油さえなく、私の内側を汚した。

ベットサイドのライトが暖かいオレンジで二人の裸を包んでくれる。背中合わせで私は壁を見つめて、彼は匂いのキツい煙草を吹かしている。


「うん、まぁな」


いっそう匂いが濃くなって、肩にかかっていた布を手繰り寄せて口元に押さえた。爽やかな香水の匂いに、彼の香り。


「あいつ……香水変えてないって、言ってたんだけどよ…」


情けないその声色に、私は顔だけ彼の方に向けた。

背中についた小さな傷痕はうっすらと赤く、彼女との愛を確かめていた事を物語っていた。


「いいよ、なにも言わなくて、」


私は静かに起き上がって、そっと背中に身を寄せた。ひんやりと冷たかったけど、耳を当てたら温かくドクドク小鳥の囀りみたいな鼓動が聞こえて、ひどく安心した。


「私は貴方のよ」


この国が一夫多妻だったら、男がだらしなくなって種しか意味をなさなくなりそうだから、目くじら立てられても私みたいな女が必要なの。

貴方に辛い想いはしてほしくないけど、それと同じくらいに私は貴方を愛しているから、だから彼と彼女と私が必要なの。












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