流星
歩道橋の真ん中で、学校帰り、君と2人きり。特に交わす言葉もなく、僕らの下を忙しなく走る車がエンジンを吹かして駆け抜ける音に包まれていたら、君が歩む足を止めて顔を上げた。
「あっ、流れ星…」
夜空の下で、君が呟いた。
僕は君の隣に追い付いて、ゆっくり、君の見ている空を見た。
深い紺色みたいな空。まばたきするみたいに、ちっちゃな光があって、じっと見ていたら、確かに、キラリ、と一瞬流れた。思わず僕も「あっ」と呟いた。
君はクスッと笑った。
「願い事、した?」
「まさか…、しないよ、そんなこと」
僕は大人ぶって、そんなことを言った。君はちょっぴり驚いた顔をしたけど、すぐに笑った。
「そうだよね」
君はそう言って、また空を見上げた。
「だって、あの流れた星は消えちゃったんだよ?地球を破壊しようとした罰で、消えちゃったんだもんね」
僕にはよくわからない事を君は得意気に言うから、僕は何も言い返せず、まばたきを繰り返して君を横目に夜空を眺める。
「願い事というか、命乞いみたいなもんじゃないのかな?ああゆうのって、」
ふわふわ、長い黒の髪が風になびいた。相変わらずうるさい橋の下。
「えぇと……願い事、しないの?」
君は笑う。僕は戸惑った。
「今日は、遠慮しとくよ」
向こうの信号機が赤になった。車は減速して止まる。風はゆるやか。
「もう、帰ろう」
僕は肩から下げていたカバンの柄を持ち直して歩きだした。君はそんな僕の後に続いた。
どうして僕は君が好きなんだろう。切なさが胸に広がって苦しいよ。奥歯に隠してたガムの味はもう思い出せないけど、君との毎日は忘れられないよ、きっと、星が消えても。