首筋
ちぅ、と貴方は俺の唇に吸い付いた。それがくすぐったくて、身体をグイと押し退けたら、潤んだ瞳でこっちを見てる。
「なに、」
「つけたら…あかん?」
どういうわけか、彼は寝ている俺の上で四つんばえになって、俺を逃がさないようにしている。わざとらしくコテンと首をかしげ少し唇を尖らせた。
「だって、下手じゃん」
「う……っ、だから、れんしゅー」
ちょっと怒らせてしまったし、俺も何だか今はとっても眠いから、少しだけ横を向いて、首を見やすいようにする。
「早くしな」
「…うん!」
そういったら彼は飛び付くようにして俺の首にやわらかい体温を押しつけた。
それから、ぬめりのある熱い舌が触れて、一瞬だけびくついて、そんな俺に構わず、ツゥと舌が鎖骨辺りまで下がった。
「く、すぐっ…た……っ」
膝をこすりあわせて、なんとか気を紛らわす。それからピチャピチャと汚い音がして、耳がゾクゾクする。
唾液が塗られたところは、ひんやりとして、不安な気持ちを掻き立てる。
そうして彼は何の躊躇いもなく、カプリと噛み付いた。
「い゙っ!」
うとうと仕掛けていたのに、ビリビリ激しい電流が全身を駆け巡ったと思い、ガバッと起き上がれば、自然と目の前の彼を抱き締めていた。
「ごめ…っ、いたかった?」
キュルル、と丸っこい目がやわやわ揺れて覗き込んでくる。
「ほんっと下手くそだな!」
あわあわと口元を押さえて、ごめんなさいを繰り返している。
何にも知らない彼は俺の付ける赤い痣を噛んで痕を付けるものだと思っているみたいで、幾度か挑戦しているがそのたびに控えめに歯をたてる。吸ったあとに、やんわり甘噛みしているだけなのを、まだ分からないでいる。
内心はどうってことないと笑っているのだが、可愛く謝られているから悪い気はせず、むしろ加虐心にムラムラ火が点く。だけど可愛いからって、なんでもかんでも許してしまう自分にムカムカもしている。
「てめぇ」
頭に腕を引っ掛けてグイッと俺の方へ引き寄せれば、なんの抵抗もなしに、むしろギュッと肩に抱き付いてきたから、
仕返し、と。
俺はにんまり笑って白い首に刃を立てた。
首筋に或る痛み。