パーティーは始まらない
「なんで分かってくれへんのかなー」
ヨレヨレのTシャツ一枚だけを着てなんとか裸を隠しているだけのソイツ。俺が一歩、傍に寄っただけで、無機質な白いタイルの上で、ズズッと身を縮こませた。
ムカつく。
手を差し出したらおもいっきり首を横に振られた。その反応がつまらなくて、詰め寄ったらソイツは手の力だけで、ジリジリと壁に張りつくまで後退した。
「逃げんなや…」
差し伸ばした手でソイツの前髪を掴み上げ、乱暴に赤く腫れぼったい唇に噛み付く。
んっ、んー!とかわけのわからない事を言いながらボカボカと俺の身体を容赦なく殴ってくる。わざわざ折り畳んでいた両足も、これでもかと言うほどばたつかせ、無意味な抵抗をしている。
「そんな元気あるなら一発ヤろーや」
プハッ、と唇を離して、バタバタと床に組み敷く。骨張った身体は扱いにくくて、力加減が分からない。痛い思いはさせたくないけど、その時の表情もそそられるから、どうしてやろうか迷う。
「やっ…いや……やめ、て……っ」
「手ぇ離したら、大人しく抱かれるんか?」
床と俺の間に相手を挟ませ、両手をひとつに束ねて頭の上に置いた。足の付け根に膝を入れて、グリグリと刺激を与える。
「ヒィ…!いっ、…あっ、ぅ、あ」
「なに?どーなん?」
ボロボロと、目を保護する水の膜が次から次へと剥がれ落ちる。ややあがってきた体温。哀れな事に、グロテスクがゆっくりと芯を持ちはじめた。
フルフル震え、声は喉の奥で死んだみたいで、俺の下で、必死に口で呼吸をしている。
「嫌いやないやろ?痛いの、」
じんわり膝が湿ってきたので刺激を与えるのをやめた。それなのに、荒い息を繰り返し、あうあう情けなく喘いでいる。
「お前むっちゃかわえぇ…」
俺のツゥと上がった口角に、ソイツから一瞬だけ恐怖の色が見えた。
たまらない。
束ねていた手を離し、性急にバックルを外す。いやらしい金属音を聞きながら、ソイツはハァハァと熱っぽい息を吐き出す。
だらしなく開いた口からは、てらてらと光る唾液を垂らし、潤んだ瞳とは焦点が合わない。
ごくり、と唾を飲んだ。
そうこなくてはパーティーは始まらない。