眠れない夜
眠れない夜を覚えて、電話越しの溜め息。
遠距離は物理的な距離だけではなく、意志疎通の手段も限られ、それじゃなくても伝えるのが下手な私はどんどん、彼との距離を感じた。
逢いたい、なんてワガママを言って、困らせてはいけない。だけど、この埋まることのない行き場のない気持ちをどう処理していいのか私には分からない。
「今日は、切るね…」
本当は毎日電話したいけど、お仕事を頑張っている彼の負担になってはならないと思って、週に多くて3回はしている電話も、最近は声のトーンが低くて、話題もパターン化しちゃって、通話に出てくれる回数さえも減ってきた。
「おぅ……じゃあな」
プツリ、と糸が切れるみたいな音が彼と私の間を絶つ。別に、そんな、ただ会話が終了しただけの何気ない音なのに、いまの私にとっては、そんなマイナスの事を思わず考えさせられてしまうもので、静かに目を閉じる。
もう好きだとか言われても嬉しくなくなって、だけどこれしか出来なくて。直接的にも間接的にも彼の気持ちや愛を感じたり出来ないから、ただただ不安が募るばかり。
あなたがおやすみを、言ってくれないから、私はまた眠れない夜を過ごす。