晴れた空に太陽の光。
窓から眺める外は暖かそうだけれど、実際に頬に触れる空気は冷たくて少しでも日当たりの良いところを探してしまいたくなる。


今日は久し振りの非番で、何をしようか思考を巡らせ数十分がたった時、この時間がもったいない事に気付いて溜息をつく。


仕方がないので、ゆっくり本でも読もうと図書室へ行くと、大きな窓から気持ちの良い陽射しが差し込んでいた。


お気に入りの作家の本を手に取り、一番暖かそうなソファーへ向かうと



「…珍しい。なんて無防備な」



ゆったりとソファーに寄りかかりながら、静かに寝息をたてる神田。


こんな姿めったに見れるものじゃない。



ゆっくりと神田の近くに座り、ページが開かれたまま伏せられている本に目を向けると、私が選んだ本と作者が一緒で、思わずトクリと心臓が鳴る。




神田といると、特に何をしなくても、本当に一瞬すれ違うだけでも、表現のしようがない感覚が身体中を巡らす。





それを、何て言うかは知っている。





私だって子供じゃない。

良い事も悪い事も経験してきた。


だからこの感覚が何なのかに気付く事が出来たし、それを周りに察せられてはいない筈だ。



伝えないのが美徳だとは思わない。

ただ、私の中でまだ大事にしておきたいだけ。



本から視線を上げて、ジッと顔を見つめると、いつもはつり上がっている目は柔らかく閉じられていて、睫毛の長さが際立つ。

漆黒の髪が少し頬にかかっていて思わずはらってあげたくなってしまうけれど、触れたら最後、離せなくなるかもしれないという恐怖からそれはしない。


神田にもこんな表情あるんだね。


張り詰めた空気から解放されているこの様子に、どんな関係でもない私が安心するのも変な話だけれど、今はそっとしておいてあげようと立ち上がる 筈だった。






「…まじまじと見ておいて無言で行くのはないだろ」




突然の神田の声と同時に、世界が反転する。


気がつくと、神田が座っていたソファーの感触を私の背中が感じ、バサバサと二人の本が床に落ちていて



「ちち、ちょっと神田、やだ起きて…」

「こんだけ見られて起きない訳ねぇだろ」



私の顔の横に両肘をついて、至近距離でニヤリと笑う姿に目眩がしそうになるか、今はまずこの状況をなんとかしなくては。

そう思うものの、金縛りにでもあったかのように少しも身体と目線は動かせない。




神田の鋭い、でもどこか憂のある目に捕まってしまった。





「…今日はもう、逃がさねぇ」





そう言うと、漆黒の髪が今度は私に触れて、視界は余ること無く神田でいっぱいになった。





お前の気持ちにはな




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