部活が終わってからも作業に熱中していると、気付くと外は真っ暗になっていて、慌てて片付けをして教室を飛び出す。


いけない。冬は日が短いから気をつけなくちゃ。


小走りで昇降口を目指すとそこにはこの時間には珍しく先客がいた。

同じ靴箱の列にいるということは、同じクラスの人な訳で、誰だろうと様子を見ると




「あれ、竜ヶ崎くん?」

「うわぁ!っえ、と、苗字さん?」



ビクリと飛び上がらせてしまったことに苦笑いしながら謝ると、驚いたと息を吐く同じクラスの竜ヶ崎くん。



「こんな時間まで竜ヶ崎くんどうしたの?」

「先ほど部活が終わったんですが、職員室に用事がありまして。苗字さんは何故こんな時間に?」

「私は部活の続きがしたくて」



これだよ、と見せるそれは編み途中のマフラー。

手芸部に所属する私は縫い物は得意だけれど、編み物はどうも苦手で。

これでもかと丁寧に作業していたら、みんなから遥かにペースが遅れてしまい、居残りで作業をすすめていた。



お互い靴を履き替え外に出ると、さっきよりも外は暗くなっていて早く帰らなくてはと少し焦ってしまう。



「竜ヶ崎くんは電車?」

「はい。苗字さんは」

「私は自転車なんだ」

「じゃあここでお別れですね」



そう言いながらも、竜ヶ崎くんが動く気配はない。

それどこれか、下を向いたり横を向いたり、なんだか落ち着かない様子で、あの とか その とか何か言いたげ。



「竜ヶ崎くん?」

「苗字さん、マフラーは試作品なんですか?」



マフラーって、さっき見せた途中のやつだろうか。



「試作品じゃないけど?」

「じゃあ、出来上がったら添削で提出してしまうんですか?」

「提出はするけど、でもちゃんと戻ってくるよ」



竜ヶ崎は一体何を思案しているんだろう?

俯き加減だから表情があまり分からなくて、身長差を利用して下から伺おうとすると、でしたら!と大きな声。


今度は私が飛び上がってしまい慌てて竜ヶ崎くんは謝ってくれるけれど、それで一気に距離が縮まって




「…でしたらそのマフラー、僕が頂いても構いませんか?」

「え、このマフラーを?」

「はい」

「いやでも、」



編み物苦手だから、きっと綺麗にはできないよ

そう言おうとしたのに、至近距離から見上げた竜ヶ崎くんの頬は少し赤くて



「正確に言うと、苗字さんが作ったマフラーが欲しいんです」




真剣な表情で言われてしまい、思わずゆっくりと頷いた。






その後お互い急に恥ずかしくなってしまって、竜ヶ崎くんとはその場でさよならをしたけれど

まるで竜ヶ崎くんの熱がうつったかの様に、私の頬はいつまでも熱を持っていた。












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