私のシフトは前半。
理由は非常に単純。後半より客が少ないから。
数時間の拷問の後、唯と二人でまわる楽しみを糧に私はなるべく頑張ることに決めた。
「執事&メイド喫茶只今開店します!」
あぁ、悪夢が始まる…。
『おかえりなさいませご主人様』
冷静に冷静に。私は今桃井やよいではない。ただのいちメイド。私はただのメイド…。自分に言い聞かせた。
『……紫原なんでここに…』
「暇だしここで出るお菓子美味しいからー」
私の初めてのお客さんは紫原だった。紫原は後半シフトだが、特に見てまわりたい場所もなく、ここに来たらしい。長くここに居る予定だろう。なら奥の席に座らせるべきだろう。
『紫原は奥の席で良い?』
しかし目の前の彼はピクリとも動かず私をじっと見つめる。
『…紫原?』
「敦様」
『は…?』
「俺今やよいちんのご主人様だからー」
『なっ…!!』
まさか紫原まで私を茶化しに来るとは…。でも仕方ない。今の彼はお客様なのだ。
『敦様。奥のお席へご案内致します。』
「はーい」
持参したまいう棒を両手に抱え、案内した席につく紫原であった。
「やよいちん、ちょっとこっち来てー」
手招きされて、履き慣れない靴で転ばない様に注意しながら、急いで彼の元へ向かう。それから言われるがまま隣に並ばされた。一体なにをするのかと考えているうちに謎のシャッター音が鳴った。
「えへへ。やよいちんとツーショットー」
嬉しそうにふにゃりと笑うもんだから何も言えず、紫原の頭をに軽くチョップして私は再び仕事に戻った。
スカートは制服としては着ているのだが、制服以外となるとなぜか落ち着かない。メイド服はミニであっても、中が見えないように、「ぱにえ」とかいうものを一緒に着させられているのでそこら辺は安心だ。その面に関しては、制服より安全なのかもしれないが、そもそもミニだし。スカートのうえ、メイド服なんて地獄だ。
何度もこんなことをいっているのだが、嫌なものは仕方がない。
しかし、いつまでも駄々をこねても仕方ない。
中身は一応大人だし……。
私は開き直ってメイドを演じることにした。
模擬店の運営は、トラブルもなく順調に進んでいた。
お店に来る人も、お店を回すクラスメイトもみんな楽しそうで何より──と、和んでいた。
そして、忘れかけていた爆弾は突然やってきた。
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