唯と二人っきりで遊ぼうという約束は果たしきれぬまま、夏休みは終了した。
一応二人で夏祭りに行ったのだが、途中でバスケ部に会い、そのまま一緒に行動することになってしまった。夏遊べたのはそのくらいで、あとの日は予定が合わず二学期になってしまった。
夏休みが明けると、あるイベントの準備に追われ始めた。
そう、文化祭だ。
『唯。私当日休んで良いかな』
「だめ!!」
楽しそうなオーラを出しながら準備する唯とは反対に、私は頭を抱えていた。
「そんなに嫌か?」
『嫌!!』
進行係の赤司が私の元へやって来た。手を動かせと叱られると思いきや、私の反応を楽しむかのように聞いてきた。
嫌だよ!っていうかそもそも…なんで執事&メイド喫茶なの!?百歩譲って執事は良いとして、メイドは辞めて欲しい。ちなみに男女逆転ではない。というとはつまり
「早くやよいのメイド服姿が見たいな〜」
『ゆ、唯…』
そうなのだ。この…、この私がメイド服を着なくてはならないのだ。
スカート?制服しか持っていない。
ミニスカート?幼い頃、母さんに無理矢理着させられた記憶しかない。
いじめだ。
『私だけ執事、っていうのは…』
「却下」
『…ですよねー』
ここまで駄々をこねるのはこれが初めてかもしれない。でもこればっかりは嫌なのだ。
おかえりなさいませご主人様はーとなんて、言えるわけ無い。
「はいっ!!やよいの衣装完成!!」
衣装のことだが、山城家と赤司家にはメイドさんがいるため、その服を文化祭で貸し出してくれることに。(長いスカートの裾丈は、唯の匠な裁縫技術によってミニスカートになった。)しかし、私ほどの身長のメイドさんは居ないためサイズ無かった。もう諦めて執事にすれば良いものを、唯はなんと手直しし始めた。そしてついにその衣装が完成してしまったのだ。
「じゃあ早速…」
『嫌』
まだサイズ合わなきゃ調節しなきゃいけないから着てと頼まれたが、断った。唯のことだ。サイズは恐ろしいほどピッタリだろう。だから当日まで絶対に着ない。
「やよいお前メイドやるんだってな!!」
「やよいちゃん遊びに来たよー!」
……。ため息が出たのは仕方ない。
この人たち絶対に面白がってる。大輝に関しては200%茶化しに来た。さつき姉たちのクラスは一時作業を中断し休憩に入ったらしいが来なくて良い。
「えー!今着てよー!折角出来たんだから!」
『嫌』
頑なに断り続け、“当日絶対見に来るから”と言葉を残して、時間になった二人は自分達のクラスに戻っていった。
あぁ疲れた…。マジ当日も来ないで…。
そして特に大きな問題も起こらず、私たちは文化祭当日を向かえた。
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