第15Q(3/3)

「俺の前で無理して笑ってんじゃねーよ!!!」




堪えていた涙が溢れ出した。

大輝に腕を引かれ、空になった腕は完全に行き場を失った。さっきまで、何かを抱えて恐怖で震えそうになる体を必死に抑えていたのに、今まで抱えていたペットボトルは全て砂浜へと身を埋めてしまっていた。

一度流れた涙を止めることは難しいが、それでも私は必死に止めようと努力した。

元から人前で泣くのには抵抗がある。人に弱いところを見せるのが嫌だとか、そういう理由ではない。


理由になってないけれど、私は泣くというこの行為自体嫌いなのだ。



なんとかして涙を止めようとするけれど、涙は止めどなく溢れてくる。
大輝に引かれた腕を更に引かれ、腕は自然と、大輝の背中に回るような位置になってしまった。
ドクンと一度だけ心臓が大きな音をたてた。

離してと抵抗する前に、大輝の声が耳元で聞こえ、その言葉は私の頭のなかに響いた。




「………別に誰にも言わねぇよ」




……誰かにバラされるのは嫌だ。

でも一番バレて欲しくないのは大輝だ。

嫌なのに。嫌なのに。一番知られたくなかったその本人がここにいる。


止めようとすればするほど涙はぼろぼろとこぼれ落ちた。

私が今まで必死に作ってきた心の壁が、嘘で塗り固めた気持ちも涙と共に崩れ、私の真の部分を覗かせた。このままでは、今まで違うと否定し続けていた気持ちに気付いてしまう。認めてしまう。

私は大輝の事が…



「やよいちゃん!!」



崩れていた壁はピタリとその動き止めた。それと同時に流れていた涙も止まった。
これはさつき姉の声だ。我に返った私は大輝から離れようとした。
だって、いくら私が幼馴染みだからといって、大輝は好きな人にこんなところを見せたくないだろう。



「さつき、こいつ目眩したっぽいから救護室連れてくわ」



私が大輝の胸を押す前に大輝は私の体を持ち上げた。飲みもんよろしくと言って大輝はそのまま歩き出した。
横抱きなんて慣れてない。

大輝は何も言わなかったけど、私が泣いていたことを誰にも悟られないようにしてくれていると分かった。
救護室に連れていくだなんて、私の目の腫れが収まるまでどこか違う場所で休むための言い訳のようなものだろう。

なんでこういうところだけ気が使えるのかな。こいつは。



---ねぇ、お願い。

---そんなに優しくしないで


(自分に嘘がつけなくなるから)





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後書き
いかがでしたでしょうか…。
男の人に絡まれるという経験は無いのですが、聞く限りどう対応して良いのかわからなくて、男性の力の強さに恐怖を抱くとか…。
夢主ちゃんも女の子なんですよ。しっかりしてても女の子なんです!!あぁ愛おしい!!!!すみません取り乱しました。
このお話、覚えておいて頂きたいです…。3年後の夏に、これ絡みの事件?があります…。(若干ネタバレ\(^o^)/)
呼んでくださってありがとうございます。コメントにはいつも励まされております。本当にありがとうございます。



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