第15Q(2/3)

「やよい…!!!」




突然しゃがみこんだやよいを見て、俺は慌ててやよいの傍へ寄り、自分の片膝を砂に埋めた。
さっきまでやよいに絡んでいた男たちの存在など、俺の頭の中にはもうなかった。


捕まれて少し赤くなったやよいの肩を見て、なんとも言えない不甲斐なさが溢れ出した。
緑間がもっと早く事情を話していればと思うことはなく、やよいがひとりで行くと言ったとき、自分が何もせずに行かせた事への後悔であった。

いつの間にかきつく噛んでいた唇から血が滲み、鉄の味が口内に広がっていることに俺は気づかなかった。


姉のさつきより、少し紫が混ざったようなピンク色のやよいの長い髪は、俯くあいつの表情を隠した。




「おいやよい……」




“大丈夫か?”と聞こうとしたが、直前で俺の口は止まった。

俺の目がやよいはカタカタと小刻みに震えているのを捉えた。

そして俺の胸の中には、苦い思いが込み上げてきた。無意識に眉間に寄せたシワは、次の瞬間更な深く刻まれた。




「あはは、驚いて腰抜けちゃったよ」




やよいが、明らかに無理した笑顔でそう言ったから。
“気にしないで大丈夫だから”と同じ顔でやよいは言った。

自分を抱き締めるようにペットボトルを抱え込み、うっすらと目に涙を浮かべて肩まで震えさせてるってのに………どこが大丈夫なんだよ!!!!

そして一度瞬きをすれば、いつかの光景が脳裏に映し出された。



助っ人でマネージャーとして来てくれたとき、紫原に抱き締められながら、涙を流すやよいの姿が。

産まれたときからずっと一緒にいたにも関わらず、俺が見たこともない涙を紫原にみせたやよいの姿が。




気付けば俺は、やよいがペットボトルを持っていることを無視してやよいの腕を引いた。
やよいが俺の胸に倒れ込み、俺はやよいの後頭部にてを添え、やよいの額を自分の胸に押し付けた。




「俺の前で無理して笑ってんじゃねーよ!!!」




なんで……、なんで俺には弱いところ見せねぇんだよ!
なんで頼らねぇんだよ!!


そんな思いから俺は大きな声をあげていた。





ただオレを頼ってほしい。

それ以外の感情はない。



でも………やよいの額が触れている俺の胸が熱いのは、なぜだろうか。



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