体育館から出ると聞いたことのある声。みんなそれがなんなのか気になったみてーで、これからいく場所に丁度近かったのもあり、オレらはそこへ向かった。
まさかなと思っていたが、その予想は当たった。
相手は誰か知んねーけど、強かった。やよいが負けたところとかあんまみたことねーし。
んにしてもマジで負けず嫌いだよなあいつ。普段はちょっと冷めてて、少し面倒くさがりで冷静なやよいがな・・・。
負けると“もう一回!”と言うやよいはまるで駄々をこねる子供のよう。滅多に見れることはないし、可笑しくてついクスッと笑ってしまった。
やよいが面をとるとさつきは声をあげた。俺たちを見たやよいは驚いていて、相当集中してたんだなと思った。
「やよいちゃんが剣道やってるとこ久しぶりに見たなー。ねっ大ちゃん!」
正直焦った。話を振ってくるなんて思ったなかったから。
実はやよいとは体育祭の日以来話していない。なんとなく気まずくて話す気になれなかった。
しかしよく考えてみるとどうだ。
俺がやよいを保健室まで運んだって事を、やよいは知ってる。
ややこしいが、やよいが本当の事を知ってるって事を俺が知ってるって事をあいつは知らない。
何も知らないふりをするのが一番だろう。
「あぁ。そうだな。」
短くそう返した。
やよいはこのあと稽古があるらしく、走って更衣室に向かっていった。
袴踏んで転んでなきゃいーけど。
あいつ意外とどじっ子っぽいとこあるからな。
頭にやよいが転けそうになる映像が頭に流れて吹き出しそうになった。
オレらが輪になって弁当を広げていると、やよいと同じクラスの山城ってやつがやって来た。
おー。そーいや海いくんだったっけ?
楽しくなりそーじゃん?
そんな気持ちを隠すかのようにオレは唐揚げを頬張った。
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