机をくっつけて唯を赤司の隣に座らせ、私は唯と向き合うようにして座った。
一つの教科書をみんなで見て、意見を出し合った。
唯は発言するのが苦手だから、初めは“唯はどう?”と話を振っていたけど、少しずつ慣れていったようで、自分から意見を言うようになった。
赤司は思ったより積極的に参加してくれたし、だるそうだけど、紫原も一緒に考えてくれた。
皆いい子だ。
唯が教科書をめくろうとする手が、赤司と重なって“ごめんなさい”と焦る唯が見れて、とても和やかな微笑ましい気持ちになった。
『今日は本当にありがとう!!』
いつの間にか時計の針は下校時刻を指していた。つ、つかれた・・・・。
疲れたけど、これで大輝のテスト対策はばっちりのはずだ。
このメンツで選び抜いた問題なんだ。これらを完璧にすれば補習回避どころか、そこそこいい点がとれるんじゃないだろうか。
みんなと解散し、家に帰ると昨日と同様、大きな靴があった。
やっぱり今日も来てるみたい。
今日はまだ夜ご飯を作っている途中で手が離せないみたいだったから、台所に行き、母さんにちゃんとただいまをいってから2階へ上がった。
部屋に近づくにつれ、さつき姉の声が大きくなった。根気強く教えているんだろう。あの大輝に。
コンコンと、一応ノックしてから部屋に入った。
今日は昨日と違い、いい子に勉強を教えてもらっている。ちらりと大輝を見ると、頭の上にははてなマークがいっぱい浮かんでいるように見えた。
「やよいちゃんおかえりっ!」
「おー」
『ただいまー』
あいさつをしてから、奥にある自分の机に鞄を置いた。テスト前だからいつもより中身が重く、机に置いた時の音が響いた。
鞄を開け、一冊のノートを取り出し、大輝に突き出した。
2人ともなにこれ?という顔をしている。
『出そうなところ、まとめといた。』
さつき姉は一瞬驚いた顔をしたけど、次の瞬間には安心したように息を吐いた。
大輝も同様、驚いた後、目をキラキラ輝かせた。
『言っとくけど大輝のためじゃないから。さつき姉のためだから』
ツンデレとかそーゆーのじゃない。言い方は完璧にツンデレだけど。
「私のため・・・・?」
『そうだよ。大輝の面倒ばっかり見てさつき姉全然自分の勉強できてなかったから。』
昨日とか夜遅かったし。このバカのせいで。
さつき姉が“ありがとう”とスペシャルスマイルで言ってくれた。かわうい。
大輝は今までそのことに気づいてなかったようで、うつむき、すこしだけ申し訳なさそうな顔をした。
『さっ。もうやるよ。
先に言っとくけど、手伝うのは今回だけだから』
そう釘を刺してから勉強をスタートした。
さつき姉を自身の机へ行かせ、私はさつき姉が座っていた場所に変わって座った。
『わかんなかったら言って。教えるから。』
「・・・・・・」
『ちょっと。』
1ページ目を開き、さっそく大輝は私に視線を送っていた。ここまでとは。
『あんた今までなにやってたの』
今までさつき姉が教えてくれてたはずだ。基礎の基礎が解けないのはさすがにやばいよ。
私の問いに対し、返ってきた答えはこうだ。
「・・・・バスケ」
なんかちょっといらっとしたので、少し強めに大輝の頬を両手でつねった。
そういうことを言ってるんじゃないのっ!
『あぁーー!もうやるよっ!!』
こうして大輝と私の勉強会がスタートした。
よほどさつき姉に教えてもらいたいのか、チラチラとさつき姉を見る大輝の腕をなんどもつついた。
いつもなら見たいだけ見させるが、今の大輝にそんな余裕はない。
これで補習にひっかかったら赤司たちに合わせる顔がない。
そう、大輝が赤点を取らないのは私のためでもある。
だから。マジで頑張って大輝。
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