第3Q(1/1)




唯と私はものすごいスピードで仲良くなった。一般的な仲良しのイメージはきゃいきゃいしているイメージだろうけど、私たちは違う。

唯は基本無口だ。そして私もそんなにしゃべるタイプではない。だからしゃべっている時と、黙っている時、どっちが多いかといったら、どちらかといえば黙っている方が多い。
だけどそこに気まずさはなくて、むしろ和やかなムードだ。唯といると本当に落ち着く。

今は何をしているかというと日なたぼっこ中。のんびりとした時間を過ごしている。まぁいつもこんな雰囲気だ。




話が変わるがもう仮入部期間が残すところあと1日。今日の放課後が最後で、明日の朝担任に入部届を提出する。
ほかの子は決めたよーなんて会話がぽつぽつと耳に入る中、私はというとまだ決めていない。

ちなみにバスケ部マネになる気はない。
だって双子でバスケ部マネとか絶対なんか事件起きるじゃん。そういうわけで私はバスケ部には入らない。

あ、唯はどうすんだろ。唯と同じ部活に入るのもいいかもしれない。
聞いてみるか。



『唯ー。何部はいるか決めた?』



日なたぼっこのせいか、唯は眠そうな目をしていたが、目をこすりいつもの唯の目に戻ってからこくんと一度だけ首を縦に振った。
驚いた。
正直決まってないと思ってたから。



『何部?』



まっすぐ私に向けていた顔をいきなりそらし、机に向かって小さな声で唯は答えた。



「・・・・バ、バスケ部。。」

『え、?』



嘘でしょ。唯に限って絶対に違うと思ってた。この学校に女子バスケットボール部はない。だから、つまり、そういうことだ。



『マネージャー・・・・?』

「・・・うんっ」



やばい、予想外すぎてなんてかえしたらいいのかわからない。
というか唯・・・



『バスケ部に好きな人でもいるの・・・?』



え、図星ですか。唯は肩をびくっと揺らし、あわてた表情でこちらに顔を向けた。わかりやすすぎ。

私がこう聞いたのは、唯が顔をそらした時に赤く頬を染めているのが見えたから。まさかなと思って聞いたらまさかのまさかだった。

首を横に振ってるけど顔が真っ赤だから説得力がない。
焦ってる唯が可愛くておかしくて、頭を撫でてあげた。だって、かわいいんだからしょうがない。

私がはできるだけ声のボリュームを下げて唯の耳元で問った。



『誰が好きなの?』



わざといたずらっこみたいに笑って見せた。唯はというと赤い顔をさらに赤くして、どうしよう!という顔をしていた。可愛い。
どうせ内緒とか本当にいないのとか言われるんだろうなー。
まぁいつか言ってくれるのを待とう。しつこくして嫌われるのなんてごめんだ。

そう考えている私に対し、唯はというとなぜか周りをキョロキョロと見回している。
どうしたんだ。

唯は私の耳元に顔を近づけた。



「絶対に内緒だよっ。やよいだからいうんだからねっ。
私が好きなのは・・・・」



それを聞いて言葉が出なくなった。強者がここにいました。ちなみにその人とは出身小学校は同じで、小3くらいからずっと好きらしい。なんて一途なんだ。
何か返そうとおもって息を吸おうとしたとき、タイミングが良いのか悪いのか、授業開始のチャイムが鳴った。ど、どうしよう。



「内緒ねっ!」



唯は唇に右手の人差し指をあてて可愛く念押ししてきた。言いません。口が裂けても。墓場まで持っていきますとも。

6限が終了し、唯は“また明日”と言って教室を出て行った。荷物からして、きっとバスケ部に行くんだろう。唯の後姿を見て、あの告白が頭の中に響いた。



---「私が好きなのは・・・・赤司君っ」



唯頑張れ。そう小さくぽつりとつぶやいてみた。

さて、私はどうするかなー。

窓の外に広がる深い青色の空を、伸びをしながら見た。空に浮かぶ雲はいつもより白く見えた。





* * *




今日も3人で学校に行く。しかしきっと今日で最後だろう。
なぜかって?
今日から2人はバスケ部だ。明日からは朝練が始まる。私は朝練なんてないから早くいく必要はない。

さみしいと思う反面、よかったと思う自分がいる。この2人が嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。大好きだ。
でもただ話についていけなくてつらいから。
さつき姉と大輝は、クラスも部活も同じだ。だからどうしても会話に入れない時がある。そん時私はこの2人の間には入れない。つまり、私はこの世界の人間ではないんだと、いろいろ考えてしまう。

だから。ただそれだけだ。

いつも通り4階の階段で別れた。
ふぅ、っと小さく息を吐いた。
朝から体力を使うのは朝の登校のせいかもな。

教室に入ればもうすでに唯はいた。



『おはよ』

「おはよう」



唯は、男なら誰でも惚れてしまうような笑顔を毎日私にくれる。私は女だし、レズじゃないからそれはないけど。
癒しだ。
通学の疲れも、いつもこの子が癒してくれる。

今日は珍しく唯の方から話しかけてきた。



「やよいは何部に入るの?」

『ん?書道部』

「えっ!?」



唯は大きな目をさらに大きく開いた。
そんなに驚くか?

それが顔に出ていたのか“運動部に入ると思ってたからびっくりしただけだよ”と言われた。

あぁ。そういうことか。

でもそう思われるのは仕方ないのかもしれない。

自分で言うのもなんだが、運動はできる方だ。前の世界にいた時から悪くはなかったが、こっちに来て、その能力は数段上がっていた。
50m走は全力じゃなくても余裕で7秒台前半。体育の授業でやるスポーツはなぜか全て経験者並に出来る。きっとトリップした時の作用かなんかだろう。

それと幼稚園の年長あたりからピアノと剣道を習い続けている。ほかにも習い事をしたことはあったけど長く続いてるのはこの2つだ。
ピアノは週1、剣道は週3であるため、運動部に入っている暇はないのだ。
そう訳を話すと唯は納得した。


放課後には早速一斉部会があり、部員全員参加だというので面倒くさいが行くことにした。
実は書道部に一度も仮入部に行っていない。
部活紹介オリエンテーションの時、他の部活は生徒が紹介していたが、書道部だけは顧問の先生が紹介していた。話を聞いていると好きな時に来る制度だと言っていた。
書道部に入部を決めた理由はこれだ。

今私は、薄汚れた書道部の部室に来て、並べられている席の一番後ろの右端に座っている。が、私以外に誰もいない。

まだみんな来てないだけだよね。きっと。

そう思って待つが、部会開始のチャイムが鳴ってもだれ一人来ない。

え、みんなばっくれた・・・?

すると不意にガラガラとドアが開き、一人の男性が中に入ってきた。
えっとあれは、顧問の、、、、なんとか先生。先生は私を見るなり、手招きで一番前の真ん中の席へと呼んだ。


いやまさかな。という私の嫌な予感は的中した。



「悪い悪い!桃井・・・だよな?
俺は顧問の山田太郎だ!
桃井!部員お前しかいないからお前が部長だ!よろしくなっ!」



ツッコミどころが多すぎてどこからツッコめばいいのかわからない。

まず先生の名前にツッコみたい。
両親どんだけテキトーなの!もう名付ける気ないよね!かわいそうっ!そんな簡単な名前を覚えられなかった私の記憶力も残念すぎる!そしてあなたの顔は山田太郎じゃない!!マジでイケメンなのにもったいなさすぎるwww
これは笑うしかない。


って、これは置いといて。。。。
私一人しかいないってなに・・・?



「いやー、まさか入ってくれる人がいるとは思ってなかったよ!正直っ!
帝光中は文化部が少ないみたいで、俺校長から文化部作れって頼まれて作ったんだけどよ!
まさか入ってくれる人がいるとは思わなかったよ。」



なるほど、今年できたばっかってことか。
それで私一人ってこと。1年生であんなに人数いるのに?あらーー。
マジこいつ適当に作ったけど部員入っちゃいましたわらみたいな感じにしか聞こえないんですけど。


私が質問しようとしたことをタローちゃんは全部先に言ってくれた。




ざっと。
“部活のルールはお前が決めて良い!まぁお前しかいないけどw活動日も!”

“活動内容もお前が決めて良い!まぁ字をかくだけだとおもうけどなww”

“基本は適当だ”




最後のなに、最後の。本当に部活部員入れる気なかったんだなこの人。

タローちゃん(本人にはこう呼ぶことには承諾済みだ)は、真っ白なA4の紙を渡してきて、ルール、今後の方針等、この紙にまとめて提出しろと言ってさっさと部会を終了し、部室から出て行ってしまった。

そして再び一人になったわけだが・・・・取りあえずさみしい。とても。


今日はこれを書き終え、先生と打ち合わせをして、それが終わったら今日の活動は終了と言われた。
よし、早く終わらせてしまおう。

真っ白な紙にペンを走らせた。
タローちゃんは適当人間だからだいたいのことを決めて、細かいことは追々決めていけばいい。

それにしてもついこの間まで小学6年生だった子供にこんなことやらせるって、あいつかなりひどいよね!!!


さっさと書き上げ、タローちゃんとの打ち合わせを5分で終了させた。やっぱりテキトーだった。


正門へ向かう途中、あけっぱなしになっている体育館の扉を発見したので、中の様子を遠目から窺った。

どうやらもう選抜のテストをやっているみたいだ。
汗だくになり、肩を上下に動かして呼吸している選手がたくさんいる中、まだ余裕な表情をしている選手が4人。
さすがだとしか言いようがない。

フッと水色が体育館の扉を横切った。
黒子・・・。彼は一番つらそうに荒い呼吸を繰り返している。しかしその瞳にはしっかりと光があって安心した。


頑張れ、と絶対に届かないとわかっていながら呟いた。


さてとーー。そろそろ帰るかー。



夕陽に照らされながら正門をまたいだ。





---彼らの青春はまだ始まったばかり・・・。






◇◆◇あとがき◆◇◆
なかなか本編はいれなくてすいません!!!
もう少しオリジナルが続きます・・・・涙
早く本編入りたい・・・・
読んで下さった方、本当にありがとうございます!!!

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