誠凛は順調に勝ち進み、見事正邦に勝った。
2年生がかっこよかった。茶坊主ざまあみろと言ってやりたい←
次あたるのは秀徳。
今は休憩時間だったりする。火神は寝ちゃってるし、控え室に人はほとんどいないし、静かだし暇だ。
ちょっとお散歩するくらいいいよね。
微妙に空いているドアの隙間から控え室を抜け出した。
高尾に会えるかなー?私のこと覚えてるかな?
散歩のついでに会えたらいいなーと思いながら気ままに歩いた。
会場広いー!こんなところに道あるー!とか好き勝手歩いた。
あぁ。私はバカだ。
迷子になりました。てへ。
じゃなくて
……誰か助けて。
においをたどってどうにかしようと思ったけど、色んなところからにおいがするからどれを辿ったらいいか分からない。
あー。どうしようどうしよう。どうにかして帰らないと。
お散歩禁止令とか耐えられない。リードとか首輪つけられるとか耐えられない。
同じ場所を行ったり来たり。
誰か来ないかなーーーーーと頭で唱えた。
「あれ?ソラ?」
来た救世主ーーー!声のした後ろを振り返り、もうダッシュをかけた。
においと声でわかる。この人は、絶対鷹だ!高尾だ!
「ひっさしぶりだなー!」
私が飛び付くとちゃんと受け止めてくれた。
「それにしても驚いたぜ。
お前が誠凛にいただなんてよ。」
世界は狭いってほんとだなーと私に高い高いしながら言った。
ちなみに今日の着ぐるみは誠凛のユニフォームと同じデザインのものだ。それで分かったんだと思う。
って!こんなのんびりしてる場合じゃない!控え室教えてもらわないと・・・!
私が考えている間に高尾は歩き出した。あれ?高尾どこ行くの?楽しそうに鼻唄歌ってるけど、あ。ちなみに歌ってるのはカタルリズムです。じゃなくて!どこ行くの!?
トントンと前足で高尾の腕を叩き、視線を送るとニヤリと笑い“行ってからのお楽しみ”と言った。これは絶対誠凛の控え室じゃない。なに、じゃあどこだ??
「ついたぜ」
『!?』
高尾の腕から抜け出そうと思った時にはもう遅かった。ちょ、ちょっとぉお!??
「高尾お前今までどこいって・・・、って高尾それ何」
「んあぁ、ソラっす。」
ちょっとそれは答えになってない気もするが、私の種類がバレると良くないから突っ込まないで置こう。
『迷子っぽかったんで連れてきちゃいました』という高尾。
迷子って分かってるならなぜここへ連れてきた!?
大坪主将は私と同じ事を思っていたらしく、私の心の声を代わりに高尾に聞いてくれた。
あんた大好きだ。
「いやぁー、ソラが飛び付いてきたんでいっかなーって!」
「よくねぇだろ!」
木村、あんたも大好きだ。
そうだよ!よくないよ!早く帰んないと首輪の刑が執行される・・・・・・!
着ぐるみのおかげで私の居るべき場所はみんなどこか分かっている。暑苦しいけどこれはなかなか便利だ。
高尾は私を離す気はないらしい。ぎゅうぎゅうと腕に力を入れて逃げないようにしてる。
いやぁー!首輪だけは嫌!!
「誠凛のやつらも探しているだろう。
早く返してこい。」
大坪さんんん!
「大坪の言う通りだ。
早く返してこい。」
木村さんんん!
「高尾!
そいつこっちに寄越せ!轢くぞ!」
宮地さぁーん、?んんん?、?!!
「「「・・・・・・は?」」」
高尾と大坪さんと木村さんの声がハモった。
固まってしまったこの空間に、宮地がパキパキと指をならす音だけが響いた。
そして謎のカウントダウンが始まった。
それは高尾の死のカウントダウン。しかもいきなり“1”から始まった。
怖ッ!!宮地怖っ!!
高尾もそれを察したらしく、顔を真っ青にして宮地に私を差し出した。
なんか私魔王を納めるための貢ぎ物みたいになってるんですけど!高尾ひどい!
爽やかな顔に真っ黒な笑みを浮かべた彼の腕に私はおさまった。
ひぃぃぃいいいい!!
あ、めっちゃいいにおいするこの人。
私と目が合うと真っ黒だった彼の背後は、ぱぁっと花が舞い始めた。
「お前可愛いなぁー!」
よしよしよしと私の頭を撫でてくるこの人は誰だ。私こんな人知らない!!
私の知っている宮地はこんな人じゃない!!!
その後私は時間になるまで宮地に遊んでもらった。
もう帰れないのが分かったので開き直った。
宮地の爽やかな笑顔は可愛いが格好いい。女の子はきっと皆これにやられるんだろうなと思った。
中身はかなり狂暴なのに、。
でも宮地はイメージと全然違う。優しいよ。すっごく!初めの魔王はきっと目の錯覚って思うほど。
きゃっきゃと遊ぶ私と宮地。
一方、他秀徳メンバー。
宮地の豹変ぶりに驚き、終始動けずにいた。
((((試合前ピリピリしてるのも怖いけど・・・・・・
逆にこれも怖ぇ!!))))
気持ちがひとつになった秀徳であった。
宮地に抱かれたまま会場へやって来た私。
私が聞いた第一声はあの人の声。
「ソラ!?」
もうダッシュで近づいてきたのは赤い彼。目をつり上げて宮地の前に立った。
あれれれ。なんかこのムード良くないーよね。
二人の目線が絡み合いバチバチと火花を散らし始めた。なんだ、これ。緑間じゃないの!?火花散らす相手間違ってない!?
それを見かねた大坪が慌てて宮地から私を引き剥がし、すまないと言ってから訳を話し、火神に私を返してくれた。
うん。やっぱり私は大坪さん。あなたが大好きだ。
しばらく睨み合っていた火神と宮地であったが、日向が火神にげんこつを食らわせ両者ベンチに戻っていった。
んーー。やっぱりここが。火神の腕の中が一番落ち着く。
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