03.だからトラっす

「火神君」

「うお!??」

「おはようございます」



もうあと少しで学校につくという所で、いきなり何処からか声がして、火神同様、私も驚きで大きく肩が跳ねた。


びっくしりた……。

まさかこの人は……




「黒子……おめぇいつから「さっきです」
そか、。はよ」



期待を裏切らない登場の仕方だ。

いきなり現れた人物。
それは火神の相棒、誠凛の光と影の影。黒子テツヤだった。


アニメを観ていた時から思ってたけど、本物はもっと綺麗な水色をしている。

じーっと見つめていれば、黒子はその視線に気付いたようで、黒子は私を見つめ返した。



「このが昨日言ってた子ですか?」

「あぁ」

「助かったんですね。よかったです。」

「昨日はさんきゅーな。おかげで助かったぜ」



話が全く見えてこないが、推測するに『具合の悪いトラを拾ったのだがどうすればいいのか』と火神が黒子に相談でもしたのだろう。



「もう火神君になついているんですね。
拾われた犬とか、普通そうなつくものでは無いようですが…」

「そうなのか?」

「はい。
そういえば名前はもうつけたんですか?」



黒子の質問に対し、火神は少しハキハキした声で『おう』と返事をしたが、黒子は少し眉間に皺を寄せ、探るように『なんと名付けたのか』と火神に問った。



「ソラだ!!」

「……本当に火神君がつけたんですか?」



信じられないといった口調で黒子は言った。



「何疑ってんだよ」

「いえ。火神君がそんなまともな名前をつけるとは予想外だったので」

「てめっ…!」

「ソラですか。素敵ですね」



黒子はそう言いながらと私に顔を近づけた。水色の瞳に自分が映って自分が水色に見えた。

そう何度も自分の名前を連呼されると恥ずかしい。
言い遅れたがこの"ソラ"という名前。私が前居た世界の名前なのだ。

だから火神が私に名前を付けたときは心底驚いた。


話している間に体育館に到着した。中からはバッシュが床とこすれる音が聞こえる。
扉を開こうとして伸ばしていた手は、取っ手を掴む前に止まった。

どうしたんだろう。開けないのかな?



「……カントクになんて説明しよ」



火神は少しあせった顔で言った。
なるほど。そういうことか。


「あったことをそのまま話せばいいんじゃないですか?」

「そうだな。じゃあ行くか」



黒子の言葉に納得した様な表情を浮かべ、火神は体育館の扉を開いた。




* * *




「おはようございます」

「うす」

「おー、黒子に火神。……って、火神それ何」



さすがに私の存在を見逃す人はいなかった。それを言ったのは黒目にきれいな黒髪の人。きっとあの人は。


「トラっす。」

「トラねー。うん、トラかー。って……えぇ!?」



きっとたぶん。



「伊月うるせぇ!って火神お前何持ってんだよ」



黒髪先輩はやっぱり伊月さんでした。そして次に登場してきたのはメガネさん。あの人しかいないでしょう。



「だから  トラっす」



火神は若干面倒くさそうに答えた。きっと何回これを言えばいいのかと、そう思っているんだろう。私を抱える手を片腕にして火神は頭をかいた。



「あ、火神君。カントク来ましたよ」



自主練をしていた他の人たちも手を止め、火神の周りには人が集まっていた。
少しの間ぼーっとしていれば黒子の前にカントクこと、相田リコらしき人物がいた。



「なーにみんな集まってんのよ」

「あ。カントク……」



ばちっと音を立てるようにその人と目があった。
瞬間。私の脳内には危険信号が発令したが逃げようとしたときにはもう遅かった。



「きゃー!なにこれかわいいーーー



リコは私を見るなり火神から私を奪い、それから人間でいう高い高いをされた。

顔を思いきり緩ませて私の事を撫でまくっていたが、何かハッとしたように急に目付きが鋭いものに変わった。
何を考えているのか分からず、私の心臓はドキリと跳ねた。



「火神君、これって……」

「だからトラッだって言ってんだろ……です



すっかり大人しくなってしまったリコを不思議に思って、ちらっと顔をのぞきこんだ。




「火神君。この子飼う、の?」

「うす」



リコは一拍置いたあと、言葉を続けた。



「確か法律的にダメよ。」

「な"!?」



待って、じゃあ私はこれからどうなるの!?
嫌だ!動物園なんか絶対に行きたくない!!!

すると火神はリコの腕にいる私をひょいと取り上げた。



「オレが飼う



ぎゅっと抱き締められ、それに答えるように火神の胸に身を擦り寄せた。



「(まぁ面白そうだしバレなきゃ大丈夫よね)
分かったわ。
そのかわりちゃんと責任もって育てることっ!
成長したら飼えないし、いつ襲ってくるかわからないわ。
その時は分かってるわよね。」

「……うす」



絶対そんなことしないもん!
噛んだりしないもん!



「んー。でもトラってバレないようにしないとね」



リコは皆が練習している間に、着ぐるみを作ってくれた。
毛皮にさらに着ぐるみを纏うのはモコモコするし暑いけど、動物園に行く位ならこっちの方が全然良い。

作ってもらった着ぐるみは可愛いしピッタリで驚いた。

料理が悲惨だから裁縫とか、そういう女子力系のやつはからっきしだと思ってたけど違うようだ。


……リコごめん。





こうして私は誠凛の一員となった。


これからよろしくお願いします。



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