目を開けると見慣れない部屋に居た。
『部屋』と言ったが、置いてあるものでそう判断しただけであり、大きさ的には体育館レベルである。
ここどこ…
取り合えず私の部屋でないことは確かだ。
部屋には必要最低限な生活用品しかなく、床にはバスケットボールやダンベルが。
雑誌棚には綺麗にバスケ雑誌が並んでいる。
床にゴミもなく、脱ぎ捨てたような服も見当たらない。
どうやらここの住人は綺麗好きな様だ。
キィっと、後ろから扉の金具が軋む音がして、反射的に振り向けば赤髪の巨人が立っていた。
ちょっと待って。身長高いのは知ってた。
知ってたけどさ。
リアル190pってこんなにデカいの?
そんなはず無いよね。
何これどうなってんの。
混乱する私のことなどお構いなしに、その巨人は私に近づいてきた。
それから私の両脇に手を差し込んで、自身の顔の高さまでひょいと私を持ち上げた。
私はこの顔を。
この人物をよく知っている。
ただ決して出会うはずのない人物。
「元気になったみてーだな。」
深い赤色の瞳には不思議なものが映っていた。
猫のような犬のような。
私と目が合っているはず。
なのに人の形をしていないのは何故だろう。
彼が見ているものを確かめようと、私は慌てて彼から自分の姿へと視線を変えた。
……嘘でしょ…??
「俺の名前は火神大我。
お前の名前は“ソラ”だ!
こらからよろしくな!」
驚きと困惑で言葉がでない。
ただ私が置かれている状況だけは分かった。
私はどうやら『黒子のバスケ』の世界にトリップしてきてしまったようだ。
しかも『トラ』の姿で。──
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