17.どたばた

「おー!!海だー!!泳ごう!!」
「合宿だ!!ダアホ!!」



−−−暑い暑い夏がやってきた。

初めは景虎さんとお留守番の予定だったけど、奇跡的に動物もOKな宿で、私も皆と一緒に合宿についていくことになった。それこそ初めは嬉しかったけれど、こうも暑いと景虎さんとクーラーの効いた部屋にいた方が良かったのかもしれないと思ってしまう。
夏なんだから熱いのは当たり前で、皆も暑いのは分かっている。でも私は薄着が出来ない。夏に毛皮に着ぐるみって、季節はずれにもほどがある。
火神には冷房のある宿に居ても良いと言われたが、やっぱり皆が頑張っているのに私だけのんびりの過ごすには気が引けて、私もみんなと同じ太陽が照り付ける砂浜についていった。

しかし行ったところで何も出来ることは無く、暑さにへばる私は逆に面倒をかけている。明日は大人しく宿に居ようか。

明日はどうして過ごそうかと悩むだけで、私の合宿初日は終了してしまった。




そして二日目…。


「なぜここにいるのだよっ!!」


聞き覚えのある声が宿に響き、私は目覚めた。
それから数分後、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえてきた。

いやぁ、、、まさかね。


「ソラはここか」
「緑間てめェ勝手に人の部屋入ってんじゃねぇ!!」


な、なに!??
目を開けたらそこには赤と緑の大男が取っ組み合いをしている、なんとも不思議な光景が目に映った。そしてその後ろには両者の"影"が呆れた目でそれを並んで眺めていた。
ちょっと見てないで止めてください。

それにしても最悪の目覚めだ。こんなに嫌な目覚め方をしたことがない。
少しばかり苛立ちながら、体をのそりと持ち上げると、たちまち体が宙に浮いた。



「何言われようがソラは渡さねぇよ!!」
「ふん。それなら力ずくで奪ってやるのだよ。」



聞かぬ間に随分と訳の分からない方向に話が進んでいる。なんだなんだ。そしていつの間にか私を引っ張りはじめた。
さっきも言ったが今日は最上級に目覚めが悪くイコール機嫌が悪い。ムカついたからどっちの手か分からないけど少し強めに歯を立ててやった。



「って〜!!」
「っ!!!!」



瞬間的に両者の手が離れ、空中に放り出されたが、猫科の運動神経で難なく床に着地した。



「全く、本当にダメですね君たちは。」
「そうだぜ。ソラのことも考えろよな」



説教をするように言い放ったのは黒子と高尾で、両エースにダメ出しをした。



「ソラ、こっちにおいで」
「朝飯食いに行こーぜ」



私は迷わず、爽やかにそして優しく微笑んで私を呼ぶ彼らの元へと駆けた。
後ろでエース様達が「ソラー!!」なんて言ってるけど、聞こえない振りをした。

ちゃんと反省してください。



「では行きましょうか」
「ふたりともちゃんと反省しろよな」



影二人は私の良き理解者だと知った朝だった。

練習は昨日の様に砂浜で行われた。昨日と違うところといったらやっぱり…。



「秀徳高校と合同練習よ!」



そうならないことを願っていたけれど(緑間とか魔王ミヤジとかいるから)、しかしその願いは神には届かず、物語は原作通りに進んでいる。
夢小説で『私が来た事で物語が変わってる…!?どうしたら…!!』なんてシーンがあるけれど、私の場合はそれが一切ない。トラだし、人間じゃないからだろう。(ただ、キャラの性格はだいぶ変えてしまったみたいだけど)

練習を初めて早々、火神は「みんなの分の飲み物買ってきて」とリコに言われ、体育館から姿を消した。
着いていこうとしたけど、火神に止められたので飲み物とタオルを用意して待つことにした。


合同練習の最後にはミニゲームをやって、二日目の練習は終了した。朝の影コンビの説教が効いたのか「ソラをかけて勝負だ!!」と言われることもなく何事も起きなくて幸いだ。

中練組はさっさと体育館を片付けて宿へと戻っていった。




「ソラ、お風呂に入りましょうか」



未だ帰ってこない火神を玄関で待っていると、優しい声がふわりと落ちてきた。後ろを振り替える前に盛大な舌打ちが三重に聞こえる。
あぁ、なるほど。
緑間と高尾なのはなんとなく予想はしていたけれど、魔王ミヤジまでいるとは。
争いが始まるかと思いきや、今度は早い者勝ち制度になったようで、



「ソラ、今日は俺と寝るのだよ」



そして三重の舌打ち。



「じゃあ明日は俺とな」



またまた三重の舌打ち。
どうやら私に選択肢はないらしい。面倒くさいので彼らの方針に合わせることにした。
お気づきだろうがこの場所に火神はいない。つまりこの合宿では火神と触れ合うことはほとんどないことになる。
まぁ普段は常に一緒にいるし、同じ合宿所にいる限り全く会えないわけではないから大丈夫だろうけど…。



「では行きましょうか」



黒子にだっこされて私は玄関から引き剥がされ、た。のだが…黒子さんここって…

大浴場じゃないですか!???しかも中から声するし!!
いや、確かに火神とお風呂一緒に入ったことはあるけども火神も腰にちゃんとタオル巻いてるけども正直一緒にお風呂とかそわそわしすぎて記憶がほとんどない。 火神ひとりで限界なのに誠凛ほぼ全員とか絶対に無理だ。

というか今更すぎるけど、火神とお風呂とかかなりめちゃくちゃ大胆な事をしていたのではないだろうか。

いやいや今はそれどころじゃない。

慌てて黒子の腕からすり抜けて、私は逃げ出した。たどり着いたのはやっぱり玄関で。



「すみません。ソラは女の子なのに気遣いが足りませんでした。」



黒子は私の後を追ってきて、申し訳なさそうにそう言った。良かった…。私が逃げた理由を黒子はちゃんと分かってくれたようだ。

黒子は私を先にお風呂に入れてくれようとしたけれど、黒子の方が疲れてるし先に入ってもらった。

結局私が寝るまで火神には会えず、合宿二日目は終わってしまった。

寝る場所は、約束通り秀徳高校の部屋。ナイトキャップを被った(かわいい)緑間は私を抱き枕のように抱えるとあっという間に眠りに落ちていた。
その一方私は慣れない環境のせいで眠れず、火神のカバンから漁って勝手に持ってきたタオルに顔を埋めてやっと眠ることができた。


明日はちゃんと火神には撫でてもらえるだろうか。そんなことを思いながら、私の意識は落ちていった。

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🌸あとがき🌸
久しぶりの更新でした。お時間かかってしまって申し訳ありません…。あと火神とのからみが少ない…。もっともっとイチャイチャさせたかった…!!!!!!涙
ここはさらっと流したかったんですけど、書いてたら思ったより字数が増えてしまった。。。
テツくんとのお風呂シーン、真ちゃんとのおやすみシーンは書きたかったけど本当に長くなりそうなので切らせていただきました。。。ご希望される方が多ければ、あと時間があれば書こうと思っています。まぁ火神落ちなのでいないと思いますが笑
次回は…、ちょっと大変なこと?に、なる?起きる?なんて表現したらいいんだろうかとにかくなにか起きます
更新まで今しばらくお待ちください…。


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