13.宣戦布告


火神と私は無事再開を果たした。つまり試験を突破したということになる。まぁパスしなくても戻ってこれたみたいだけど。


ちなみに順位は……上位50位に入ったらしい。。。


火神は私がいない間に相当頑張っていたみたいだ。

久々の再会、といっても2日だけだけれど、私は随分と久しぶりに感じた。
火神に抱き締められた時、ぶわっとなにかが溢れ出しそうになった。



そしてこれからがインターハイ予選本番というところなのだが、秀徳戦で痛めた火神の足は相当なダメージを受けていて、実力テスト後直ぐの練習は見学しろと、リコにストップをかけられた。


火神は私の隣で、みんなの練習をバスケしたそうにウズウズしながら見ていた。そして私は、今後の生活をどうするか考えていた。


全体的に火神の負担になるようなことはさせないつもりだ。
学校までの登下校は自分であるいたり、水浴びも自分でしたり、食べ終わったご飯の器を自分で運んだり。
火神が座っていて何か遠くのものを取ろうしたときは、私がそれを取りに行こう。
兎に角火神の足をなるべく使わないように生活することを徹底しよう。



火神はリコに、今週一杯は休養。明日の土曜日はは来なくていいと言われた。



しかし次の日、火神は近所のストバスコートに足を運んだ。
勿論私は全力で止めた。しかし、青峰との戦いを目の前にした火神を、私には止めることができなかった。


こんなとき自分が人間だったらと思う。

私の言うことを聞いてくれるかは分からないけれど、今の私よりは役に立つのではないだろうか。



今は伏せをしながら、バスケをする火神をひたすら監視するように見ている。
火神が時々びくりと変に体を跳ねさせるのは、きっと足の痛みを感じているからだろう。


見ていられなくて止めに入ろうと、火神の元へ駆け寄ろうと立ち上がった時、ゴウッと一瞬強い風が吹き、その風は私が知らないにおいを一緒に運んで来た。




「おーおーマジでいるよ
 さつきの情報網ってやっぱすげーわ」

「……!?」




私はその声の持ち主の姿を見て固まってしまった。
だって彼は……




「火神大我…だろ?
 相手しろ
 試してやるから」

「…あ?
 誰だテメー」




彼の挑発的な口調に対し、火神は警戒した低く、威圧のある声を出した。
強めの風が、ザアァと木の葉を揺らした音が嫌に耳についた。




「名乗りもしねーで相手しろとか気に入らねーな」

「オマエの気分とか聞いてねーよ
 やれっつったらやるんだよ」




目を吊り上げながらそう言った火神に、その人物はにやついた顔から一変し、一瞬だけ不機嫌そうに顔を歪めた。




「…まー名前ぐらいは言ってやるよ


       青峰大輝だ」




ドクンと私の心臓が嫌な音を奏で始めた。

深い青い髪、綺麗な褐色の肌。鋭い目付きをしているけれど、その目はどこか冷めている。そして自らそう名乗った。

青峰大輝だと。

何も寄せ付けないような、近寄りがたい雰囲気を放っている青峰に、私は恐怖を抱いた。
気付けばいつの間にか、私は背中を丸め、何時でも動き出せるように、四肢で地面を掴んでいた。




「ブッ倒してやるよ」




はっ…!!
火神の怒りで震えた這うような低い声で、私はやっと我に返った。

脚を痛めているのに今ここでバスケなんてやったら…!!


二人の間に割って入ろうと、地面を蹴ったときにはもう遅かった。




---ガンッ!!!!





青峰のダンクシュートが決まっていた。

火神と青峰との勝負はほとんど一方的なものだった。
火神が抜き去ろうとすれば必ずカットされ、逆に青峰の攻撃を火神が止めることはできなかった。
何度かの攻防を繰り返したあと、青峰にフェイントで火神を抜いた瞬間、火神は膝から崩れ落ちた。

気付けば私は走り出していた。




「お前の光じゃ

       淡すぎる」




その表情の読めない低い声は、私の頭にガンガンと響き、そして激しく苛立たせた。


火神は………………弱くなんかない!!!




ーーーバシッ


「あ゙ん?」

「………………ソラ!?」




私は青峰が手に持つバスケットボールに体当たりし、青峰からボールを奪った。
しかしそれを追うことはせず、私は青峰と向き合い低い唸り声をあげながら青峰を睨み付けた。




「カハッ
 不意打ちとはいえ俺からボール奪うなんてやるじゃねぇか」




一度は驚きで丸くなった青峰の目は、次の瞬間には獲物を捉えたような獣のような鋭い目付きへと変わっていた。




「おい火神。
 こいつもらってくわ」

「なっ、?!」




私に向けていた視線を火神へと変え、いい終えると再び私に視線を戻し、鍛えられた筋ばった褐色の腕を私へと伸ばした。


私は咄嗟に青峰の手を避け、猛スピードで火神の元へと走った。
しかし火神の影に隠れる事はせず、火神の前に立ち、強気な態度で青峰を睨んだ。

私は行かないと、嫌だと、そう伝わるように。


そして青峰はまるで私がそう行動すると予測していたかのように、全く表情を変えずに言った。




「おい火神。
 俺が勝ったらそいつ貰うぜ」

「!?」




え……、?青峰何言って……

予想もしなかった青峰の発言に、私は驚き、火神は何か言おうと口を開けたが、声となる前に青峰が続けた。




「まっ、勝負する前から決まってるか」




ふっと鼻をならし、青峰はストバスコートから姿を消した。

予想外の青峰の言葉に、彼がコートから去った後しばらくの間、私は動くことができなかった。

体と共に止まった思考が動き出すと直ぐに、私は火神の顔を見た。
青峰に言われたことは頭から抜け落ち、火神の足のことで頭が一杯になった。

しかし、私と火神の目が合うことはなく、火神は音がするほど歯を食い縛り、何か思い詰めたような表情をしていた。顔は地面の方を向いているけれど、その瞳には何も映っていないように見えた。


いつもの火神じゃない。いつもなら強敵との戦いを楽しみにする火神のはずなのに…。



火神…!!しっかりしてよ火神…!!



私は思い切り火神のお腹に体当たりした。でも火神はなんの反応もしなかった。

なんでそんなに自信ないみたいな顔するの…!!
私はどうなるの…!!
青峰をブッ倒してくれるんでしょ…!!


いつまでもピクリとも反応しない火神に、私は体当たりした場所と同じところに何度もパンチした。

どのくらいやっていたかは分からない。

でもあるとき、火神が突然両手でわしゃわしゃと頭をかいた。すると次にはピタリとそれをやめ、腕をだらんとおとし、はぁーーと、思い切りため息をついた。


なんだなんだ、一体火神の中で何が起きている。


そう疑問に思い、答えを出す前に火神が私を抱き締めた。




「ごめんソラ」




ドクンと大きく心臓が脈打った。
火神のその言葉の意味が分からなかったから。
それは青峰に勝てないから、ってこと………?

なんなのこのバカガミ!!!
苛立ちと不安と焦りが混ざった感情で一杯になり、私は火神の腕の中から抜け出そうと抵抗した。

しかし次の言葉で私はピタリと動きを止めた。




「俺………ぜってー勝つから」




そう言うと私を抱き締める力を少しだけ強めた。




「さっきは弱気になってた。」




“わりぃ…”と、小さな声で言った。
それを聞いて私は安心した。だって、さっきの“ごめん”の意味が分かったから。




「やっぱ俺、お前がいねーとか考えらんねぇわ」




ーーーお前が喝入れてくれたから俺はまた青峰に挑んでやろうと思えたから






「だからぜってー勝つ。」




火神のその低い声は何時もより力強くて、しっかりと芯を持っていて、私の不安などどこかへ飛んでいってしまった。


火神なら絶対に勝てる。原作なんてぶち壊せる。そう信じて疑わなかった。








しかしその約2週間後、私は火神のもとを離れた。




「約束通りこいつ貰ってくから」




誠凛は桐皇に負けたのだ。








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後書き

し、シリアス!!!書くの辛かった…。
シリアスは本当に苦手で全然文章出てこなくていつもの10倍以上書くの遅くなりますねほんんっっと。

やっと青峰の登場です。ちょっも悪役っぽくてすいません。大ちゃんとラブラブさせるのも考えたんですけど………。大ちゃんとラブラブしたかった方には申し訳ないです。たぶんそのうち(恐らくウインターカップの後)に………。ってめちゃくちゃ先ですね!!


昊様、ここまで読んでいただいてありがとうございます。


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