12.こわいもの



私は来てしまった。黄瀬宅へ。

ここに来るまで黄瀬は本当にご機嫌で、鼻歌を歌っていたり、時々スキップしたり。それが真夜中でよかったと思う。

だってこん状態の“人気モデル黄瀬涼太”なんて誰も見たくないだろうし、イメージに傷がつく。絶対。


初めは後ろ髪引かれる思いで出発したが、今では逆に黄瀬の家はどんな豪邸なのだろうかとワクワクしている。
それに確か、黄瀬にはお姉ちゃんがいたはず。

きっと美人なんだろうなー!!
お姉さんが美人なら、きっとお父さんもお母さんも美人だろう。
いつも美形にかこまれている訳だけれど、それは慣れたメンバーで。会ったこともない美人に囲まれて耐えきれるかは少し不安な部分はあるけれど、それでも少し楽しみだ。




「さぁー!着いたッスよ!ここ
 ここが俺んちッス!!」




黄瀬が足を止めたそこには・・・・・


これって、、家・・・・?お城じゃない!??こんなメルヘンなところに住んでて大丈夫?めっちゃ目立ってるよねこの家。

あと黄瀬ってやっぱお金持ちだったんね・・・。なんかモデルとかやる必要ない気がするよ私は。

私が心の中で色々と突っ込んでいる間に、黄瀬は家の前の門を開け敷地に入り、お城(黄瀬の家)の玄関前まで進んでいた。




「ただいまーッス!!!」




夜だというのに黄瀬は大きな声で言った。すると二階からドタドタドタという階段を猛スピードで降りてくる音がした。

これ黄瀬怒られるパターンじゃ・・・。

今はもう12時を回っている。寝る時間は人それぞれ違うけれど、大抵の人は寝ていてもおかしくない時間。
誰かの眠りを妨げてしまった可能性だってある。

ちょっと待って。黄瀬が怒られるってことは、私も一緒に怒られるってことじゃんか。私が怒られるわけじゃないけど、黄瀬の腕の中にいるイコールそうなるよね。


はぁ、と心の中でため息をついた。

しかし黄瀬は鈍いのかなんなのか。あの階段の足音が聞こえなかったのか、聞いていなかったのか。“ここが我が家っスよー”なんてニコニコした顔で言ってくる。

もう知らないっ!!お姉様方に制裁の飛び蹴りでもくらってしまえ!
と冗談交じりの悪態をついた。


しかし改めて見てみると、部屋の中は豪華だった。ほとんど何もものがない火神の家とは大違いだ。
別に火神の家が嫌いとか言ってない。私はむしろ火神の家が好きだ。慣れということもあるのかもしれないが、こういうキラキラしたお家はなんだか落ち着かない。

黄瀬が靴を脱ぎ、スリッパに履き替えたその時だった。




「「「涼太あんた今何時だと思ってんの!!!」」」




き、き黄瀬姉きたぁぁあああ!!

ぬわわわやっぱ美人!!予想通りの金髪!!!あれでもお姉さんって二人じゃなかったっけ?ってことは右端の人はお母さん!?若い!!というか綺麗!!

でもさすが黄瀬家。ひとりひとり輝きの色や強さは違っても、キラキラした光が彼女たちをまとっていた。
寝間着姿素敵です。(←)




「12時3分ッス。
 それにしてもみんな揃ってどうしたんスか。お迎えッスか?
 いつもしてくれないのに嬉しいっス!!」

「「「いや違うから/わよ」」」




・・・・・こいつの耳は節穴か?なんも話聞いてないじゃん!!ってかちょっと黄瀬かわいそうになってきたわ。出迎えてくれないのね。家でも扱い雑なのね。




「明日早いのに」

「そうよせっかく寝てたのに」

「明日のお弁当は涼ちゃんだけハンバーグ抜きね」

「なっ!そんんなぁっ!!」




黄瀬は睨まれながらブツブツと小言を言われた。そしてお母さん可愛い。




「・・・・・ねぇ、涼太何もってるの?」




長女のほうだろうか、組んでいた腕を解き、右手で私の顔を指さした。



「こ、これは・・・」

「なに?動物?」




あれ、ここ動物ダメなお家だったの・・・?バカ黄瀬!なんで私のこと連れてきちゃったの!!
これ追い出されちゃうやつかなぁ・・・。




「か、かわいいいい!!!」

「ちょ、姉ちゃん!?」




ちょ、姉ちゃん!?どうした!?ちょっと危険感知センサーが煩い!黄瀬逃げて!お願いだから逃げて!!!

お姉さんの豹変ぶりに私の危険感知センサーは大きな音を鳴らし始めた。
黄瀬の服を掴み、顔を合わせると黄瀬も同じようにマズいという顔をしていた。どうやら黄瀬もなにかの危険を感知したようだ。はい。では逃げましょう。




「ちょっと涼太――!!!」




黄瀬は目の前の三人をうまくかわして、その後ろにある階段を駆け上がった。流石の変わりように黄瀬母と仮次女さんはおかしいと感じたらしく、仮長女さんの両手を掴んで止めていた。ありがたや。

黄瀬君。私今まで黄瀬のこと怖いって思ってたけどそんなことかった。あなたのお姉さまのほうがもっと怖いです。




部屋にはいると黄瀬はすぐに鍵を閉めた。それからドアから一番遠い所に腰を下ろした。




「もう大丈夫ッスよソラっち」




そう言ってふわりと笑った。不意打ちを食らってドキッとしてしまったのは不可抗力だ。
いつものシャララオーラなかったら普通になっちゃうよね仕方ない仕方ない。

ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間だった。




ーーードンドンドンドン

「涼太ーーー!!!ここ開けなさいよ!!」

「しつこいッス!!ぜっったい開けないっ!!」




こ、怖い!!!!私は反射的に黄瀬にしがみついた。
うぅー…。やっぱ来るんじゃなかった……!


しかし黄瀬は強気に言い張り、守るように私を抱き締めた。




「夜なんだから静かにしなさい!お隣さんにご迷惑でしょう!」

「お隣さんにまで聞こえないわよ!」

「お姉ちゃん!もうやめてあげなよ…!
 そんなことやってると怖がられちゃうよ!!」

「…………」

「嫌われちゃうよ!!」

「それはイヤ。」

「……もう寝なさい。」

「……………はい」





お、おさまった…?
チラリと黄瀬を見ると、彼はホッとしたように息を吐いていた。
良かった。もう大丈夫そうだ。




「驚かせてごめんッス。ビックリしたよね。」




“俺も姉ちゃんがあんなになると思わなかったッス”と困ったように笑いながら言った。
うん。私ももっとクールなお姉さまだと思ってました。予想外でした。

そして黄瀬はくしゃりと私の頭を撫でた。


あーーヤバイっ。黄瀬がイケメンにしか見えない。いつものあのシャララオーラがないとこんなにも違うのか。
こんな黄瀬になれていない私は少しドキドキしている。ギャップってやつですかね?


ふわぁあ…。
黄瀬姉がもう迫ってこないと安心したら急に眠気が襲ってきて、私はたまらずあくびを漏らした。




「俺たちももう寝よっか」




一度だけ優しく私の頭を撫でると、黄瀬はゆっくり立ち上がり、ベッドの上に腰掛けた。

えっ…と、私はどこで寝れば……?

疑問に思っていると、黄瀬は自分が座っているベッドの横をぽんぽんっと叩いた。

そこにいけってことかな?


そう解釈した私は黄瀬の膝の上からベッドの上に乗った。
おぉー!ふわふわだ…!!
跳び跳ねたくなる気持ちをグッと押さえて、私はいつもより背筋を伸ばして黄瀬に体を向けて座った。




「じゃあ俺ちょっと着替えてくるから」




な、ななな!!!ここで!?いや、でもここ黄瀬の部屋だから当たり前か…!!どどどどどうしよう!!!
咄嗟に私は黄瀬に背を向け、前足で目元を隠しながら更に頭をベッドに押し付けた。

これできっと大丈夫っ…!!安心して着替えてくださいっ、!!

黄瀬は“ソラっち慌てすぎ”と言いながらクスクス笑っている。
いやそりゃ慌てますよ。女子が直で男子の着替えなんて、ね!!?
火神なんていつも急に着替えだすから大変なんだよ…!!

数分もしないうちに黄瀬は着替え終わり、ベッドに潜り込んだ。




「おいで。ソラっち」




ご丁寧に布団をめくって、黄瀬は私を布団の中に招いた。

え、まじ?
私はてっきり床かどこかで寝るものかと…。
それに私…………。


中々布団に入らない私に黄瀬は有るものを取り出した。




「これなら安心?」

『…………!!!!』




私はそれを見て飛び付いた。
くん……。やっぱ落ち着く……。

やば、まぶた重……。




「おやすみ」




その言葉を聞いて私の意識は途切れた。




(だぁあーー、もう!ソラっち可愛すぎ!
姉ちゃん怖かったけどありがとう!ソラから俺にこんなに甘えてくれるなんてっ……!!!!)

(マジ演技するの辛かったッス!!
本当の俺の心の中は姉ちゃんみたいだったけど、そんなことしたら折角の##NAME3##っちと仲良くなるチャンスが無駄になるッスからね!
あーーー頑張った俺っ!!!)



(てゆーか、黒子っちに“一応渡しときます”って言われて貰ったけど…。
火神っちのタオル見た瞬間飛びついたし。あんなにソワソワしてたのにこれひとつでこんなにぐっすり眠るなんて、ホント妬けるッス。)

(む、なんかムカつくから嫌がらせしてやるッス)





【同時刻inリコ宅】




ーーーピリリリ

「ん?なんだ?(誰だよこんな時間に。ん?画像着きじゃねーか)」



ーーーピッ

ーーーガチャ

「ただ今帰りました」

「おー黒子かー。」



ーーーガタガタガタ

「黄瀬ぇぇええ!!あのヤロっ…………!!!!」

「か、か、火神!??」

「お、落ち着け!!どうしたんだ!!」

「だーー!話してる場合じゃねぇ!帰る!!」

「はぁぁ!??」




突然理由も話さず帰ろうとした火神の前に黒子が立ちはだかった。




「…………どこへ行くんですか。」

「どこって……黄瀬ん家に決まってんだろ!!」

「なぜですか。」

「なぜって、こんなの送られてきたら行くしかねぇだろ!!」




火神は勢いよく携帯のディスプレイを黒子に突き出した。
そして何がなんだかわからないが、火神の行動の謎を解き明かす答えがその画面にあると分かった、2年生たちはその画面を見るため、火神の携帯に群がった。


そこには白いタオルにくるまれながら黄瀬と同じベッドに入り、ぐっすりと眠るソラの姿。そしてその額にキスする黄瀬の姿が写っていた。




(((なるほどな!!!)))


2年生は呆れ混じり納得する一方、黒子は大きなため息をついき、それからきつく火神を睨んだ。




「火神君。それでも男ですか?」

「なっ!!」



「男なら正々堂々戦うべきです。それに……




 火神君のソラに対する想いはその程度なんですか?」


「くっそ!!
 勉強教えろ!……です!!」


(((戦うって!??)))

(火神君がアホで良かったです。
まぁ黄瀬君にはテストにパス出来なかったらソラの飼い主が黄瀬君になるなんて言ってないんですけどね。)


「さぁ、火神君。頑張りましょう。」

「うぉぉおおおお!!」

「お、おぉ!なんかよく分かんないけど頑張れ火神!」

「待ってろよソラ!!!!」





(((やっぱソラスゲェ!!!)))






(てか火神と黄瀬ってメル友だったんだな……)

(いえ、さっき僕が教えました)

(黒子お前いつの間に…!?)

(あ、今日はもうその下りいいです)

(今日は!?ってか黒子怖っ!!)




※最後のは本当は夢主ちゃんが大好きで先輩に八つ当たりする黒子でした。←

後書きーーーーーーーーーーーー
いかがでしたでしょうか。。。
黄瀬姉の性格がわからない\(^o^)/黄瀬姉好きな方には申し訳なかったです……。
ホント毎回書いてて思うんです。
私夢主になりたいと←←←
いつも読んでくださっている方ありがとうございます。
楽しみにしていただけて嬉しいです。
頑張りますね!!


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