波乱は突然やって来る。
そうそれは実力テスト。
出ました!そんなのあったなー!とかのんきに構えているのは結末を知っている私だけ。
火神の膝の上でのんきに大きな欠伸している私とは反対に、みんなはとても焦っている。
火神の成績のひどさに・・・・・
そして、今私たちはリコの家に来て、バカガミ学力UP作戦が行われているのだが・・・、
---スパァアンン
「いってぇえ!!」
「ごるぁああ!!
寝るなバカガミ!!」
この音を聞いたのは何回目だろう。眠気に負けうとうとする度小金井のハリセンを食らい、頬は赤く腫れ始めている。
これって、大丈夫なの?一種のパワハラじゃない?本当に大丈夫!?
「ってか火神ひとついいか」
「なんだ・・・?ですか」
そんななか、片方の口角をヒクつかせながら、我らがキャプテン日向順平が声を低くして火神に訊ねた。
「お前はいつまでソラ撫でてんだ!!
ペン持ってるほうの手ぇ動かせよ!」
「あ、それ俺も思ってた。」
「いやその前に火神右利きだから。ペン持ってんの左手だしそもそも勉強する気ないよね火神」
「・・・・・・んのバ火神ぃぃい!!」
リコは小金井からハリセンを奪い取り、スパァンと乾いた良い音をたて、火神の頭を叩いた。
ゴゴゴという効果音が出そうなほど、鬼の角のようなものが見えると錯覚するほどだった。
「ってーな!!
左手だとうまくソラのことなでられねーんだよ!」
「いや知らんわ!」
「開き直ってんじゃねェよ!!」
左手でたたかれた部分をさすりながら反論した火神は先輩方のツッコミと共に再びハリセンを食らった。今度は顔面に。
私は今、火神の胡坐をかいたその上に乗っかっている。
おさまらない言い争いで火神がいつまたハリセンで叩かれるか分からない。先輩方が絶対に外さないと分かっていても、いつか、流れ弾ならぬ流れハリセンが私に飛んできそうでソワソワしている。
ってかもうやめようよ!勉強しようよ!この時間要らないって絶対!
ツッコミたくても突っ込めなくて半ば諦めモードに入り、もう夜も遅いから寝てしまおうと瞼を閉じようとした時だった。
突然の浮遊感で私の目は逆に大きく見開かれ、いつも落ち着いた静かな声により、その目はさらに大きく開いた。
「火神君。テストが終わるまで没収です。
黄瀬君に預けてきます。」
そう言い放ったのは火神の相棒である黒子で、火神が黒子からソラを奪い返すため動き出す前に素早くミスディレクションを発動させ、部屋の扉の前へと移動した。
それから何か思い出したように立ち止まり、くるりと火神のほうを振り返り、衝撃的な一言を残してあっという間に部屋から姿を消した。
"試験パスしないと飼い主は黄瀬君になりますか死ぬ気で頑張ってください。では。"
すいません黒子先生。二つ三つ宜しいでしょうか。
まず頭の整理がつきません。
次になぜそうなった。
そして最後に私に拒否権はないのでしょうか。
こうして私は黒子に連れていかれるがまま、黄瀬のもとへと連行されるのであった。
* * *
「ソラっちーー!!!」
待ち合わせの場所に、いつか振りのシャララ君は
息を荒げ汗だくだくでやって来た。
キラキラというよりも寧ろギラギラに近い目で迫られ、私は本能で黒子にしがみついた。だって怖い!!!!!!
逃げようという視線を必死に黒子に送った。
すると黒子は私の気持ちを察してくれたのか、こくりと一度だけゆっくり頷いた。
ミスディレクションで切り抜けると思って安心したそのときだった。黒子が私を少しだけ強く抱き締めた。
あれ、なんか嫌な予感。
私の危険察知能力はこの姿になって随分磨かれたと思う。その予感は見事に当たった。
マズいと思ったときには黒子はもう黄瀬に向かって全力で駆けていた。
黒子ってこんなに足速かったの!???いやこんな速くない!いつもこんくらいで走れよ!
ってかもうそんなのいいから黒子止まれ!黄瀬が怖ぃぃいいい!!!
黒子の腕から抜け出すことのできなかった私は、必死に黒子の服を掴むことしかできなかった。
そして黄瀬まであと数メートルの距離にまで来たとき、私はぎゅうっと固く目を瞑った。
ーーードスッ
「ぐほぉお!!」
は、へ??
「黄瀬君落ち着いてください。気持ち悪いです。」
「ゲホッ、ゴホッひ、どいッス…!
……っ、か跳び蹴、りかなり効いたッス…わ」
この時やっと私が目をつぶっている間に何が起きていたのか分かった。
言わなくても何が起きたのか大体の予想はおつきでしょう。
てっきり黒子には私の思いは伝わっていないのかと思ったが、そうではなかったようだ。
少々、いやかなり荒い手をつかったが跳び蹴りという方法で黄瀬を止めてくれた。
ありがとう黒子。黄瀬の心配はしてない。だってあの人死ななさそうだし←
地面に倒れていた黄瀬はゆらりと立ち上がり、ふらふらとした足取りで黒子に蹴りを入れられたお腹を片方のてで押さえながら、ゆっくりと私たちの方へ歩いてきた。
黒子の蹴りが相当きいたのか、先ほどの勢いは失われていた。
私たちの前まで来ると、黄瀬は足を止めた。
「黒子っちにメール貰って俺飛んできたんスよ。
ここまで来てさっきの話無しとかないッスよね?」
「僕は嘘でこんな時間に黄瀬君を呼び出すほど非常識じゃないです。」
「じゃあ…!!!!」
そう言うと黄瀬は黒子に向けていた目線を私へと移し、私の顔の高さまで膝を折った。
「ってな訳でしばらくの間よろくねっ!ソラっち!」
そして黄瀬は私に両手を広げた。
え、これホントにいかなきゃダメかな。
今は怖くないけど、その時は黒子がいたけれど、黄瀬がまた暴走したら私はどうしたら良いか分からない。
決心できない私は黒子にしがみついた。
「火神君のためです。お願いします。」
そっ、か。私がいると火神勉強しないの…か。
でも、もし原作と違って火神が試験パス出来なかったら……
「あ、火神君に言ったあれははったりです。」
え…?
「嘘なので黄瀬君には2、3日預かってほしいとしか言ってません。」
「なに!?なんの話してんの黒子っち!!?」
ーーードスッ
「うるさいです。
そういうわけですから安心して行ってきてください。
火神君もやるときはやる男ですから。」
うぅーん。。。そこまで黒子がいうなら…。火神のためだよね。
……ってか今日の黒子狂暴だね。
私が黄瀬の腕へと移ると、彼はポケットから携帯電話を取り出した。
「火神っちのアドレス教えてくれないッスか?」
「あ、はい。」
何かあったとき困りますもんねと黒子が言ったが、ニヤリと嫌な笑みを浮かべる黄瀬を見て何か企んでいるように思えた。
アドレスを交換すると私たちは別れた。
火神は心配だけど、。
こうして私は黄瀬宅に向かうのであった。
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