10.雨宿り




一方誠凛は雨をしのぐため、一件の店の暖簾を潜った。

するとそこには




「黄瀬と笠松!?」




海常高校主将笠松幸男と、エース黄瀬涼太がいた。




「黒子っちと火神っちじゃないっスか!」




そう言うと黄瀬はキョロキョロと辺りを見回し始め、それを不思議に思った火神は口を開いた。




「どうしたんだよ」




火神がそう言うと黄瀬は物凄い剣幕で火神を睨み付けた。背後にドス黒いオーラを発しながら。




「火神っち・・・・・・、殺すよ?」

「はぁ!?いきなりなんなんだよ!!」




黄瀬はその返答を聞き、眉をピクリと動かし、低い声で言った。




「じゃあなんでソラっちがいないんスか?」

「!?(ソラがいない!?)」

「マジでなにしてんスか?
 もういい。オレ探しに行くっス。」




険しい顔をした黄瀬はガタンという音をたて乱暴に席から立った。




「おい黄瀬!
 (黄瀬がこんなになるなんて、ソラって一体どんなやつなんだ!?)」

「オレも・・・・!!」




大雨の中探しに行こうとする黄瀬を堪らず笠松は止め、火神はその後を追った。


もうあと3歩程で出入り口に到達するというところでガラガラと音を立て、開けようとしていた扉が開いた。




「すまっせーん
 おっちゃん二人空いて・・・・ん?」

「・・・・・・店を変えるぞ高尾」




その光景を見た緑間はクルリと反転し、店から出ようとした。が、




「「ちょっと待て/待つっス」」




しかしそれは火神と黄瀬に肩を掴まれ、妨げられた。




「なんなのだよ」

「それはこっちの台詞だっつーの!」

「なにソラっち持って帰ろうとしてんスか!」




すると緑間は火神と黄瀬に向き合い言い放った。それもかなりの声量で




「・・・・・こいつはオレが拾ったのだよ!!」

「「はぁ!?」」

((((これ本当に緑間!?))))




すると大男三人は店の入り口でギャーギャーと言い合いを始めた。

明らかに迷惑である。




「三人とも煩いです。
 もうボクが預かります。」

「黒子テメェどっからわいた・・・・!」

「いいから席に座ってください。
 迷惑です。煩いです。」




それを見かねた黒子は影の薄さを利用し、バスタオルに包まれたままのソラを緑間から奪い、三人を席に座るよう促した。

火神、黄瀬、緑間は舌打ちをしとても自然な流れで同じ席に座った。




(アレ、なんか原作と違う。)





席につくと黄瀬は私の顔を覗き込んできた。

な、なに!?

そして私をじっと見つめたまま黒子に問った。




「ソラっちって本当にネコなんスよね?
 これどう見てもトr「煩いです。」ってえぇ!?」




い、今トラって言いかけたよね!?どうしよう!どうしよう!どうしよう!




「着ぐるみどこやったんだよ!」

「ここだ。濡れていて身体を拭くために脱がせたが・・・・・・まさかな」




緑間はぽんぽんとエナメルバックを叩き、ここにあるというアピールをした。

それにしてもありがとう!約束守ってくれて・・・・・!
緑間は約束した通り、“トラ”という所までは言わなかった。




「バレてしまっては仕方無いですね・・・・。」




なんかそれどっかの戦隊ものの悪役みたいな台詞みたいになってるよ黒子っ!

すると黒子は四人にしか聞こえない声で言った。




「秘密にしていてもらえませんか?
 でないと飼えなくなるので」




さすがの黄瀬もそれだけ私がトラだと肯定しているのが分かったらしく、目を大きくして驚いた。




「わかったっス」




しかしその表現は長くは続かず、今度は怪しくニヤリと口角を上げた。

なにたくらんでるの!?




「じゃあその代わり」




黄瀬は火神に挑発的な視線を送った。




「たまにソラっち貸して欲しいっス」

「はぁ!?なに言ってんだよ!
 貸すわけねぇだろ!」

「口止め料っスよー
 ダメなら良いんスよー?」




ソラっちがアレだってバラしても良いならねーと、すごーく意地悪な口調で言った。

こんな黄瀬くん見たことありません。知りません。

本当に言いかねない黄瀬のその雰囲気に火神は負け、仕方なく返事をした。




「わーったよ!!」

「やりぃー!
 じゃあソラっち!こっち来るっス!」




ガッツポーズをした黄瀬は、キラキラとした目をして私に向かって手を広げた。

これは・・・・行くべき?




「何を言っているのだよ。
 ソラはオレのところに来るのだよ。」

「緑間っち!?」

「(あちゃー。真ちゃん完璧にソラのこと気に入っちゃったな。)」

「なんで緑間まで!」

「口止め料なのだよ」

「っ〜〜!!」




弱味を握られている火神はそれ以上なにも言えず二人の口論が始まった。

もう・・・・・・なんなの・・・・。

しかし黒子の一言でその言い合いはピタリと止まった。




「ソラに決めてもらうのはどうでしょう。」




あれなんかデジャヴ。

“火神君も含めて”と黒子は言った。

すると三人とも台詞を吐きながらガタガタと立ち上がった。




「いいだろう。」

「次は負けねぇっスよ。」

「はっ。今度もオレが勝つに決まってんだろ。」




だから、なんかおかしいよこれ!!

三人はにらみ合い火花を散らし始めた。




(((なんなんだよコレ!つか黒子遊んでんな!!)))




立ち上がった三人は少し開けた出入り口の方へ一列に並び、同時にしゃがんだ。




「ソラっちー!」

「ソラ!」

「ソラ。オレのところに来るのだよ。」




・・・・・・なんだこれ。




「さぁソラ、選んでください。」




普通なら笑ってしまう光景だが、それはあまりに奇妙すぎ逆に笑う所ではなかった。ただし黒子を覗き。


オイ黒子笑ってんな!


唇を噛み締め、肩はふるふると震えている。いつものポーカーフェイスはどこへやら。


んー・・・・・。どうしよう。どこへ行くのも怖い。なんか怖い!!

えーい!この人だっ!


私はある人物のもとへ走った。




「え!?」

「っ!?」

「なっ!?」



「・・・・・・え?」




「皆さん失恋しましたね。」






んー。落ち着く。




「な、な、なななんで笠松センパイなんスか!」




私は三人の方へは走らず、座敷の席に座る笠松のあぐらの上に乗っかった。

ちょっとこの人には甘えてみたかった。

ゴロゴロとくつろぐ私を見ると、三人とも四つん這いになって地面を叩いた。


シュールすぎます。




「取り合えず何か頼みませんか。」
 お腹減りました。




いつになっても終わらないそれを終わらせるためには黒子は言った。




「「「えぇーい!もうかたっぱしから持ってこい!/持って来るっス!/持って来るのだよ!」」」




ソラにフラれたショックでやけ食いする三人が居たとか。







私は笠松に甘えまくった。というより少し反応を楽しんでいた。

隣に座る高尾の提案で私にご飯を食べさせてくれることになって、オロオロしながらも食べさせてくれた。

そのお礼にペロッと指先を舐めると赤面して可愛かった。

私が身を擦り寄せても赤面するし、兎に角可愛かった。


高尾にも頭一杯撫でてもらえたし、今度チャリアカーにのせてくれる約束もした。

やったね!








雨が上がって暫くしたところで解散になり、私と火神は帰路に着いた。

お店にはいる前は分厚く茶色い雲に覆われていた空は、雲ひとつない紺色の空へと変わっていた。


それがとても綺麗で上を見上げながら歩いた。

すると必然的に移る火神。


彼もまた私と同じように空を見上げて歩いていた。

なんだかちょっとだけ嬉しくなった。




家に着くとまず火神がお風呂に入り、その後私を洗ってくれた。

今日は一杯雨に打たれたから、頭から流れる暖かいお湯がとても気持ちよかった。



ドライヤーでしっかり乾かされた後、私たちは寝室に向かった。と言っても火神に連れてこられたのだけれど。


何時もならすぐ横になって布団を私にかけてくれるのだが、今日は少し違った。

布団の上で胡座をかき、その上に私を乗せ、じっと私の顔を真剣な瞳で見つめた。

赤い瞳にはキョトンとした顔のトラである自分の姿が映った。




「ソラ」




何時もより低めのトーンで呟かれドキッとしてしまう。




「ソラが好きなのはオレだよな・・・?」




少し悲しそうな、不安そうな目をしていて心臓のリズムは早くなる一方だ。


・・・・・・ずるいよ。


私はそれに答えるように火神の頬をなめた。


すると火神は満足したようで、ふんわりと優しく微笑み、私の額にチュッと口付けた。



わ、わ、わ!!っ〜〜!!

ほんとズルい・・・・・・。




その日は抱き締められて眠った。

トクン、トクンと規則正しく刻まれるそのリズムはとても心地よくて、私はあっという間に眠りについた。



やっぱり私はこの腕の中が一番好き。








後書き


お好み焼き編でした!
個人的にはこの章めちゃくちゃ好きです笑
愛されてて良いなと言うただの管理人の自己満足ですが。。。
最後はあまくさせていただきました。最近火神君が足りない気がして・・・←

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