09.正体発覚?


「おい真ちゃん!!」




傘を差し、片手にもう一本傘を持った高尾が現れた。




「って、ソラ…?」




どーもソラです。
高尾と目が合うと、はっとした顔をして、取り合えず建物の中に入ろうと高尾に言われ、中に入った。




「真ちゃん着替えてな。」

「言われなくてもそうするのだよ!」




ちょっとー!私がいるのに着替えないで!緑間に背を向けると高尾に捕まれた。




「お前もめっちゃ濡れてんじゃん。」




まぁ、雨に打たれてましたから、ね。




「拭いてやるからこれ脱がすぞ」




は・・・・・・?ちょっと待ってーーー!ダメ!これは!ダメ!

だって、トラってバレちゃう・・・!

そしてなんかエロいから辞めて!


必死に暴れて高尾の腕の中から逃げた。素早く足の間を通り抜けたり、ベンチのしたに隠れたり。




「ちょ、真ちゃんも手伝って!」

「仕方無いのだよ。」




いつまでも逃げ続ける私に、高尾は着替え終わった緑間に協力を求めた。
いやー!増えたっ!敵が増えた!



必死に逃げ回ったが最終的に捕まった。ズルいよこんなの!2対1なんて卑怯だ!

私は高尾に動きを抑えられ、緑間は私の目の前に立った。




「脱がせるぞ」

「どーぞ真ちゃんやっちゃって」




だからなんかエロいぃいい!!言い方が!

というよりも今はトラとバレることよりも、恥ずかしさで頭が一杯だ。

着ぐるみを脱がされるだけなのだが、まるで服を脱がされるような感覚で耐えられないのだ。



ばたばた暴れてももう遅く意味を成さない。二人の目が大きく開いたとき、私は完全に抵抗するのをやめた。


バレてしまった・・・・・・。

これ以上の抵抗は無駄だ。




「真ちゃんコレって・・・・・・」

「トラ・・・・・・だな」

「だ、よな。」




あわわわわ。どうしよう。

取り合えず黙っててもらわないと・・・・・・!


高尾が私を押さえ付ける力は緩んでいて、先ほどまで拘束されていた前足を口の前に持ってきて、大きくばってんを作った。


伝われ・・・・・・!!




「言うな、ってことか・・・・・・?」




そう!そうです!

私は何回も頭を縦に振った。




「ソラの頼みなら仕方ねぇな。
 約束するぜ。」




よかった・・・・!高尾ありがとう…!




「真ちゃんも言わねーよな」

「黙っててやるのだよ。」




言い方素直じゃないけど緑間もありがとう…!




「んじゃ、拭いてやるからここ来て」




いつの間にか出した真っ白なバスタオルをあぐらの上にしき、その上に乗れと手でそこをぽんぽんと叩いた。

はーいっ。ただ今。


ピョンっと上に乗ると高尾は身体を拭いてくれた。


でも着ぐるみびしょびしょで気持ち悪かったから逆に良かったかもな。取り合えず二人とも黙ってくれるみたいで安心だ。



動物園行きは免れそうです。




* * *





「で、ソラどうしよっか」




身支度が完了したところで高尾が言った。




「黒子の連絡先は知っている。」

「んじゃ、明日にでも届けにいくか。」




これから会うから考えなくても大丈夫なのに。




「腹減ったし、どっかでメシ食いながら雨宿りしよーぜ。」

「ふん。付き合ってやるのだよ。」




本当に素直じゃないな緑間は。


会場をあとにした私は今バスタオルにくるまれながら、緑間の腕に抱かれている。トラとバレないためにバスタオルを着ぐるみ代わりにしてくれていた。

なぜ緑間なのかというと高尾はあのチャリアカーを押しているからだ。

あ、ちゃんとジャンケンしてたよ?ジャンケンに一回も負けない緑間ってなんなんだろう。



緑間の性格はよく分からない。でも、ちょっとでも動いたら大人しくしていろとか怒られそうなので、じっとしている。


雨のなか歩くのはなんだか新鮮だ。


じーっと雨を眺めていると、不意に視線を感じた。




「いいなぁー。」




高尾はソラ抱っこしたかったーと口を尖らせ、羨ましがるような声をした。

……なんか照れます。

緑間はそれを無視したが、しばらくして口を開いた。




「お前はこいつと前から面識があったのだな」

「ん?あぁ。」




なー!っと私に向かって歯を見せて笑った。普通に格好いい。

私はこくんと頷いた。

しかし聞いた緑間はなんの相槌も打たず沈黙が続いた。

すると高尾がニヤニヤした顔で言った。




「なに?妬いちゃった・・・・・・?」




はぁ…。高尾・・・・・・そんなわけないでしょう。あの緑間がそんなわけ




「・・・・・・ふん。」




ふん?ふんってなんだ!否定してないよそれ!
なに緑間も動物大好きな人だったの!?



それから緑間が高尾にからかわれたのは言うまでもない。

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