誠凛は勝利した。勝つと分かっていても最後はドキドキした。マジ黒子ナイスだ!
もう限界で動けなくなった火神を運ぶジャンケンも終了し、私たち誠凛一行は会場を後にした。
いつもは火神に持って貰ってるけど、今日は歩いてる。水溜まりを避けてるけど、落ちてくる雨が地面に跳ねて、着ぐるみはもうぐちゃぐちゃだ。
後ろにある会場をなんとなくふりかえってみれば、ひとつの人影が見えた。その人物は雨が降っているというのに傘はささずぼーっと突っ立っていた。
彼には相棒が居るから別にいいかなって思ったけど、その姿を見たらなんだか放っておけなくなった。
私は少しずつ歩くペースを落とし、列の最後尾まで来るとそこへ走って向かった。
水溜まりも気にせず、一直線に彼のもとへと駆けた。
真下にいるのに緑間は私の存在に全く気づいていない。
それだけ今は負けたことで頭が一杯ってこと、か。一人で誰にも泣き顔を見せないところめっちゃ格好いいって思ってる。
でも、誰かに弱いところを、本当の緑間を見せてもいいんじゃないだろうか。
空を見上げる緑間の頬から雫が流れる。それはただの水なのか、涙なのか分からない。
でもその姿はすごく寂しそうに見えた。
仕方無い。今は私が側にいてあげよう。
上から目線は照れ隠し。
本当は素直に、側にいてあげたいと思った。
私にできるのはこれくらいだけど。
緑間の足にピタリとくっつき、身を擦り寄せた。
するとしばらくしてから上から声が振ってきた
「お前は・・・・」
こいつは確か高尾が連れてきた“ソラ”という生き物。種類は特定できない。着ぐるみを着ていて。
そいつは今オレが一番みたくないものを着ている。
オレはさっき誠凛に・・・・・・!!
そう思ったらこいつに腹が立った。
でもこいつがオレに触れている部分がとても温かくて、それだけで少しずつ心が和らいでいった。
・・・・・・全くなんなのだよ。
なんとなくその温もりにちゃんと触れたくなって、オレはそいつを抱き上げた。
さっきまで触れていて温かかった足の熱が雨のせいでどんどん冷えていくことに寂しさを感じた。
するとこいつはオレの目を見ながら、オレの心臓辺りに両方の前足を置いた。
なんだかこいつに全てを見透かされている気分になった。
「全く生意気なのだよ」
オレがそう言うと身体をピクリと跳ね上がらせた。でもその手は変わらずそこに置いたまま、真っ直ぐな目で俺を見た。
本当に生意気なのだよ。
でも、心が少し軽くなった気がした。
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