甘い日常を
※黒バス長編『しましま』の夢主設定
基本彼には甘えてばかりの私だけど、甘えるだけじゃなくて、彼に甘えられるときだってある。
例えば練習後の夜。
火神はリコや日向にプレイの事で叱られた位でへこむやつじゃない。
だけど時々へこむときがある。
例えば自分がやろうとしていることが思うように上手くできないとき。
始めはなんとかやって見せようとするけれど、どれだけ頑張ってもやろうとしていることが出来ない日が続くと、ついにはへこんで暗い顔をすることが多くなる。
広いリビングの中央にあるソファーにどかりと乱暴に座り、『はぁ……』と短くため息をつく。
火神と一緒に暮らし始めた頃……というより飼って貰うようになった頃は、そっとしておいてあげた方が良いのかなと思ってあまり近くには寄らなかった。
しかしある日、ソファーの上で片ひざを抱えた火神と目が合った。
その時やっと分かった。
彼は今、甘えたいときなのだと。
目は反らされてしまったが、私は構わず火神の元へ駆け、そのまま火神の膝の上に乗った。
突然のことに驚いた様子だったが、暫くじっと火神の目を見ていると、抱えていた片方の膝を床に下ろし、自分の正面になるように私を持ち上げ、そして膝の上に下ろした。
それから心に溜まったものを言葉としてぽつぽつと吐き出した。
漫画ではいつも明るく、自分を信じ、やると決めたところまで突っ走る。火神にはそんな印象を持っていた。
しかし実際関わってみると『本当に自分はキセキの世代と対等に渡り合えるようになれるだろうか』と不安に思う、火神がいた。
当然のことだがやはり火神も人間なのだなと思った。
火神がひととおり話終えると私はふんっと鼻を鳴らした。
馬鹿にした訳ではないがそれに近い。
意味としては今更何を言っているんだという感じだ。
やると決めたら出来るまでやる。それが火神大我だろう、と。
何がどう伝わったか分からないが、火神は私の頭をめちゃめちゃに撫で、それから突然ぎゅっと抱き締めた。
首の辺りに火神の顔が埋まり、しかもぐりぐりと押し付けてくるのでくすぐったさを感じたが我慢した。
「ミョウジ……」
火神が呟く。
切な気に掠れた声を出すものだから思わず耳が震えてしまう。
私はそれを隠すかのように火神の首もとに顔を埋めた。
その日は甘えさせたいだけ甘えさせた。
寝る前は何額やら頬やらに何度もキスをされ、最後は鼻の辺りにキスを落とし、満足げに柔らかい笑みを作ると私を抱き締め、いくらもしないうちに火神は穏やかな寝息をたて始めた。
一方の私は眠るどころではなかったが、顔の熱を冷ますなり目を瞑り、無理矢理
眠りに落ちた。
次の日、火神はいつも通りの火神に戻っていた。
まぁ、何はともあれ元気になって良かった。
きっとこの時からだろう。
火神が時々私に甘えてくるようになった。
基本的には拒まず、彼のさせたいようにさせるが、あんまりにもしつこいと噛みついて火神から逃げることもあったがまぁそれは置いておこう。
「いっ……!」
暑いの抱きついてきたので噛みつきました。
今日も私は火神と仲良くやってます。
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