憧れです
私には憧れの人がいる。
周りをすごく良く見ていて、アドバイスも出来て。
真っ直ぐで、芯がしっかりしていてとても強い。
私は誠凛バスケ部1年マネージャー。
皆のことを支えなくてはいけないのに、どじばかりする私は、皆を支えるどころか逆に支えられている。
だからこそ憧れている。
皆を支える木吉先輩に。
「木吉先輩!!」
「おぉ、ミョウジか。」
部活が始まる前、着替えを済ませ体育館に現れた木吉先輩に駆け寄ると、木吉先輩は私の頭を撫でた。
撫でられるその手はとても優しく、なんだか温かい気持ちになる。
なんで先輩は、こんなにも人を穏やかに出来るのだろう。
私もそんな人になりたい。
「私、木吉先輩みたいになりたいです!」
『どうしたら先輩みたいになれますか!』と言葉を続けると、先輩は少し困ったように頬をかきながら、『どうって言われてもなぁ。』と言った。
「やめろやめろ。木吉みてーになられるとこっちが困るわ!!」
「主将!」
私の願望を否定したのは誠凛バスケットボール部主将・日向順平である。
本人は木吉先輩を『嫌い』と言っているが、『恩人』とも言っており、実際のところ主将の本心は分からない。
しかし、それとこれとでは話が別である。
「主将!なんでそんなこと言うんですか!」
生意気かとは思いつつ、自分の願望を否定されたことに対し反発の声をあげた。
木吉先輩の周りを見れるところとか、芯がしっかりしているところ。それからみんなから信用されていて、そして頼られているところ。
そんな木吉先輩に憧れていると、主将に告げた。
「そしていつか私は木吉先輩になります!!」
『みたい』という言葉が抜けたことに気付かず、勝ち誇ったように言えば、何故だか主将ではなく木吉先輩の声が返ってきた。
「それは困るな。
俺はミョウジの事が好きなんだが、ミョウジが俺になっちまったら俺はミョウジとは付き合えないだろ?」
呆然とする私の前に木吉先輩がやって来て、私の顔の高さまで屈むと言った。
「だから俺的には、ミョウジはミョウジのままでいてくれる方が助かる。
今のままでいてくんねーか?」
いつもと変わらぬ表情で木吉先輩。
反対に今の私はどんな顔をしているのだろう。赤面もいいとこだろう。
状況処理能力が限界で思考回路は完全にショートした。
木吉先輩のまっすぐな瞳に見つめられるのも見つめるのも限界で、私は首だけを回し、後ろにいる日向先輩へと顔を向けた。
「ど、どう、どうしたらいいんでしょうか主将……!!」
「お、俺が知るかよ!!」
木吉の突然の告白(?)に、ミョウジだけでなく日向も驚いていた。
人の恋愛相談に乗ったこともなければ、告白されたこともなく、恋愛経験など無いに等しい日向はこの状況をどうしたら良いのか分からなかった。
そしてそれはミョウジも同じであり、その場は暫く収拾が着かなかったとか、なんとか。
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