裏返し

無理だと分かっていても、どうしても気持ちを伝えずにはいられなくて、さりげなく呟いた君への想い。



「……好き
俺と付き合って欲しいっス」



人がいる騒がしい教室で、俺は言った。聞こえていないならそれで良い。ただどうしても言葉にしたくて。



『別にいいよ』



本を読んでいた君は、手元にある紙から俺の瞳を真っ直ぐ見て、確かにそう言った。
普段からあまり表情が変わらない真顔の君だけど、何となく顔が赤い気がして、夏の暑さのせいかも…と、思いつつ、自分の良いように解釈した。

これで晴れてカップル…!!イチャイチャラブラブできると思いきや、むしろその逆…



『ベタベタすんなウザい!!こっちくんな!!』
「ナマエっち〜」



今は付き合って…いる、のだが付き合う前からこんなんで、初めにも言ったが本当に付き合うなんて夢のまた夢のように思っていた。

付き合ってからナマエっちはもっと冷たくなった気がする。
俺の告白をOKしてくれたということは、"両想いだから"だと思うが、正直そんな感じはしない。

何故ナマエっちは俺と付き合ってくれたのか、不思議でならない。彼女は本当に俺の事が好きなのだろうか。現に彼女の口から"好き"と聞いてない。
冷たくあしらわれ続け、不安は日に日に増すばかりだった。



「俺の事どうおもってるんスかね…」



どうしようもなくなって、俺はとうとうナマエっちの親友に相談した。



「んーじゃあ、今日の放課後教室の廊下にいて。バレないように。」



それ以上は何も言わず、どうしてと聞く暇も無く、ナマエっちの親友は何処かへ行ってしまった。

何がなんだか分からないけど、取り敢えず言う通りにしよう。

そう決めて俺は放課後が来るのを待った。

今は放課後。

俺は言われた通り、気配を消して教室の廊下に立っていた。

教室の中からは、ナマエっちとナマエの親友が楽しそうに話している声が聞こえる。


内容は他愛のない話。
特に俺に関係した話はしてない。

あの子は俺に何を聞かせたかったのだろうと疑問に思ったときだった。



「で、最近どうなのよ。黄瀬君とは」



いきなりど直球の質問がとんだ。



「どうもこうも見たまんまだけど」



見たまんまってなんスか!
俺見られる側だから分かんないんスけど!!



「もーちょっと優しくしてあげても良いんじゃない?」
「なんで。というか無理。」



ちょっとナマエっち!?無理とか言わないで欲しいっス!!

俺ってやっぱり好かれて無いんじゃ…



「もうkissしたの?」
「ちょっ!あんたバカなんじゃないの!?」



無駄に発音が良いことなんか気にしていられてない。

まだ手もろくに繋いだことないのにそんなの無理っスよ!!

そろそろ俺のハート砕けそう…。

うつむくと、教室からガタガタと椅子と机がぶつかる音がした。



「本当にあんたピュアだねー。
好きな人の話するだけで耳赤くなるなんて」
「っ〜!!うるさいっ!!」



え……。今なんて…?

いつもなら騒がしくて聞こえないと思う。
でも今は放課後で、友人同士話す声も、人が歩く音も聞こえない。

だから聞こえた。



「……優しくなんて……出来る訳ないでしょ。

だって……好きすぎてほんと無理……」


「はっはっは。
あんた本当に黄瀬君好きだね〜」

「もうあいつの名前出さないで!
 ……恥ずかしい。」



ちょっと……。なんすかそれ。
嬉しすぎるじゃないっスか。



「優しくできないならせめて髪切ったら?
耳が見えるようにっ。」
「…嫌!めっちゃ好きなのバレるもん!!」



俺はその会話を最後にその場所から去った。

あのままあそこにいたら嬉しさが胸から弾けてどうにかなりそうだったから。
今の俺幸せすぎてなんでもできる気がする。

本人から直接好きの言葉を聞いた訳じゃないけど、俺の事ちゃんと好きって分かって。それが何よりも嬉しかった。










「ナマエっち〜!!」
「ちょ、こっちくんな…!!」



俺は今日も懲りずにナマエっちを追いかける。

逃げるけど俺の足の方が速いから直ぐに追い付いて、後ろからナマエっちを俺の腕に閉じ込めた。



「っ!??はなせー!!!」



昨日あんなの聞いて離す俺じゃない。

俺は片手でナマエっちに抱きつきながら、空いたもうひとつの手でそっとナマエっちの髪を手にとり、ナマエっちの耳にかけた。



耳……赤い…。

これめっちゃ赤いっスよね。
ってことはめっちゃ俺の事好きって事で良いんスよね、?

あーもー。
本当に。

ナマエっち好きすぎて、可愛すぎて無理っスわ。



「ねぇナマエっち!!
髪切らないっスか?ショートめっちゃ似合うと思うんスよー!!」

「…!??」

「!??え、え、あ、ちょっ!!」

「こっちみんな馬鹿!」



巻き付けていた腕を離し、向かい合わせになるように、ナマエっちの体をくるりと回した。

そこまでは良い。

ただ、ナマエっちは耳だけじゃなくて顔まで真っ赤で。

なんつーか予想外で。ナマエっちが可愛すぎて。


こういうのを正に理性が聞かなくなったというのだろう。

俺は気づかぬうちに、ナマエっちの頬を両手で包んでいた。
が、その直後に腹に鈍痛が走った。



「ってぇ〜!!
何するんスか!!いきなり蹴るのはなしっスよ!!」

「意味分かんない!!
あんなのされたら蹴るに決まってるでしょ!!」



赤かった顔をさらに赤くしたナマエっちは逃げるようにその場から居なくなった。

ナマエっちの蹴りが意外と強くて、しゃがみこんで腹の痛みに耐えながら、頭はナマエっちのことで一杯だった。

痛みとナマエっちの可愛さに悶えていると、誰かが俺の肩を叩いた。

ナマエっちの親友だった。
彼女は俺に親指を親指を立てながら言った。



「ま、そういうことだ。」
「可愛すぎるっスね」



それだけしか言われてないけど、『頑張れ』と応援されている様な気がした。



前はずっと辛かった。不安だった。

でも今は思わない。


君のする行動は、気持ちと裏返しって分かったから。──




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▼あとがき
最後がやっぱなんか雑!!すいません!!
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