私には彼氏がいる。それはそれは完璧な。


黄瀬くんは、バスケ部エースだ。モデルをやってるから顔は凄く綺麗だし、背も高くてスタイルは抜群だ。おまけに人懐っこい性格で、いつも彼の周りには人が耐えない。
モテすぎて妬まれることもあるみたいだけど、勉強は苦手で、男子からは微いじられキャラとして憎みきれないそんな人。

だから彼は学校のアイドルで男女問わず人気者だ。


たいして私は、純文化部の家庭科部。運動は出来なくはないけど出来るわけでもない。顔もスタイルも並。背は少し高いくらい。頭は中の上か上の下くらいで特別すごいわけではないし、人より長けているものは何一つない。
唯一自分の個性をあげるとすれば、どんくさい。というかよく転ぶ。

その程度の女である。

玉砕覚悟で、涙を拭くバスタオルまで準備して黄瀬君に告白してOKされたときは、別の意味で涙が出た。


夢じゃないかと思って、黄瀬君に頬をつねってと頼んだら、痛みで涙が出るほどつねられたのは今でも忘れられない。


まぁそれはおいといて、少しSっ気はあるけれど、パーフェクトな男の子である黄瀬君と平凡すぎる私は不釣り合いだと十分理解しているが、付き合っている。




そしてその黄瀬君は今日が誕生日。

無礼者ですいません。私の俗に言う初彼は黄瀬君です。もう一度言います。すいません。

彼氏の誕生日という体験も今日が初めてです。

プレゼントはどうしたら良いのか分からなくて、結局自分は家庭科部だということで、ベタかと思いつつもケーキを作ることにした。
甘いのが苦手だと困るから、無難にフルーツタルトにした。

昨日の夜、一生懸命作ったそれを持って学校へと向かった。


が、さっきも言ったが彼は学校のアイドルで人気者だ。付け加えるとしたら、特に女子の人気が半端じゃない。


プレゼントを私に行こうとするけれど、彼はいつも以上に色んな女の子に囲まれていて、私は近づく事すら出来なかった。

それが朝、授業間の休み時間、昼休みと全部玉砕だ。
もう放課後しかないかなと肩を落としなからトイレに行って手を洗っているときだった。




「黄瀬君の誕生日プレゼントどうしたー?」

「私は     !」

「すごーい!私は    !!」

「うちもそれで迷った!
でもうちは      !!!!」




彼女たちの口から飛び出てくるのは、興味がない私でも分かるほど有名な高級ブランドの名前ばかりだった。

………やっぱり頑張ってなんか買った方が良かったかな…。

その後の会話は聞きたくなくて、私はふらふらとした足取りでその場を立ち去った。


もう帰ってしまおうと思ったけど、結局決心できないまま放課後になってしまった。

はぁ………。
ここまで来たら渡そう。精一杯の言い訳と共に。
高級ブランドのプレゼントができなくてごめんなさい。と。



体育館の裏にある、三段ほどの階段に腰を掛け、はぁっと深いため息を着いたときだった。

人の気配がこちら側に近付いてきた。


なぜか私は咄嗟にそこから見えない曲がり角に逃げた。

そしてこれもさっきにいったが、私はよく転ぶ。


私は黄瀬君のプレゼントを持ったまま地面にダイブした。ショックを受けながらも私は息を殺してその影に身を潜めた。




「なんスか?今部活中なんスけど」

「あのね!黄瀬君お誕生日おめでとう!
よかったらこれもらって!」




それは黄瀬君とだれか分からない女の子の可愛らしい声だった。

ぶわりと黒い感情が渦巻いた。

黄瀬君は人気者だからこんなことよくあるのに。
無意識にぎゅっと目を瞑った。




「………悪いッスけど、オレそれもらえないスわ」




女の子が「なんで」と聞く前に黄瀬君入った。




「オレ好きな子からしかプレゼント貰わないって決めてるから」




なに、それ。
その後の会話は聞こえてこなかった。あんなに朝からプレゼントを差し出されていたのに一つも受け取っていなかったという事が衝撃的で嬉しくて。

そんな事を考えていると不意に深く息を吐く音が聞こえた。
複数あった人の気配は一つだけになっていた。




「いつまでそんなところに隠れてるんスか
ナマエっち〜」

『!?』




気まずさを感じながらも私は黄瀬君の前に立った。
勿論背中に渡そうとしていたものを隠して。

すると黄瀬君は無言で私に手を伸ばした。その意味は分かってるけれど、私は気づかない振りをした。いくらかの沈黙の後、痺れを切らした黄瀬君が言った。




「ねぇ、プレゼント」




私は黙った。
だって、渡そうとしていたものはさっき転んだせいで中身はきっとぐちゃぐちゃになっていて、どんなものより価値がない。

黄瀬君はさっき好きな子からしか貰わないと言った。まぁ、私は一応の一応彼女だからそうなのだと思う。
それを聞いたときはどんなものでも渡そうと思った。でも無理だ。




「持ってきてない!!
今日が黄瀬君の誕生日だって忘れてた!!」




振り絞った声が情けなく聞こえた。
すると黄瀬君が氷付いたように表情を無くした。
しまった、と激しく後悔した。でもそれはほんの一瞬だった。




「嘘。
ナマエっちがオレの誕生日忘れてるわけないじゃないっスか」




間違ったことは言っていない。
でも彼の言葉がこうも心に引っ掛かるのは何故だろう。



「朝からオレに会おうとしても会えないで慌ててたし」




嘘でしょ!?私のこと見えてたの!?
くつくつと声を押さえながら笑う黄瀬君を見てカァっと顔が熱くなる。

それから、薄い唇は緩い弧を描き、目を細めた、その黄色い瞳は自信に満ち溢れていた。




「それにオレ、ナマエっちに愛されてる自信あるし?」




その少し小バカにしたような表情さえ綺麗だから質が悪い。普通ならムカついてしかたがないのに、私の心臓は大きく跳ねた。




『なにその自信ムカつく…!』




半分本心だけど、半分は本心ではない。
でもムカついたのは事実で、お腹に一発食らわせてやろうと思ったけどそれは叶わず、黄瀬君に手首を捕まれ未遂に終わった。




「それも照れ隠しでしょ」




………。やっぱムカつく…。でもその思いとは反対に私の頬は更に熱くなっていった。

もう諦めよう。私はプレゼントを渡すことを決めた。




『んっ…。』




転んだせいで、綺麗にリボンを結んだへこんだらを黄瀬君に差し出した。
『ブランドものじゃなくてすいませんねっ!』と投げやりに言おうとしたが、頬を緩め柔らかい笑みを浮かべた黄瀬君を見て、その言葉を飲み込んだ。




「これケーキっスよね!」




めちゃくちゃ嬉しいと、呟くように黄瀬君は言った。




『………でも、さっき転んだから中身ぐちゃぐちゃ…』



俯きながら言えば、上からクスッと笑う声が聞こえた。
ちょっとこの人、人が真剣に考えてるのに!!ぱっと顔をあげれば、眉間にシワを寄せて照れたように笑う黄瀬君がいた。




「やっぱナマエっちはナマエっちだなぁって…」




………やっぱりムカつく…。

でも、みんなに見せないSっ気のある黄瀬君が私はやっぱり好きなのだと自覚せざるを得なかった。




『誕生日 おめでとう』




私の言葉に黄瀬君はまた幸せそうに笑った。





あとがき
キャラが安定しなくてすいません。でもちょっと意地悪で、彼女の事いじめちゃうけど、本当は彼女の事が大好きで仕方ない。そんなきーちゃんが書きたかったんです…。すいません。
わんこみたいなきーちゃんも好きだけど、こういうきーちゃんも好きです。
きーちゃん誕生日おめでとう!誕生日当日はJ-WORLD行ってお祝いしてきました。←どうでもいい

読んでくださってありがとうございます。

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