相性
「悪ぃ!遅くなった!!」
『だ、大丈夫だよ』
ストバスコートに火神君がやって来た。といっても約束をしていたわけなのだが…。
本当にベタな誘い方だけど、今度の女子の体育はバスケなので、これを言い訳に、バスケ部の火神君に勇気を出してバスケを教えてと頼んだ。
まぁ黒子君が手伝ってくれたんだけど…。
ちなみに黒子君は、私が火神君の事を好きだと知っている。いつの間にかバレていて…。初めこそ少し茶化されたが、今となっては良き相談相手になってくれている。
部活で忙しい彼を何かに誘うのはとても気が引けて…。そんなとき黒子君が、火神君に私にバスケを、と言う提案をしてくれて今に至る。
いきなり二人きりだなんてそんなのは無理で、黒子君も来てくれる予定のだが、その黒子君がまだ来ない。
『そういうば、黒子君は?』
「…あぁ。あいつなら二号の所行ってから来るってよ」
『そ、そうなんだ…!!』
思わず顔がひきつりそうりなる。火神君と二人きりが嫌な訳ではない。ただ…心の準備が…!!
黒子君〜!!そう言うことなら先に私に連絡して!いきなりふたりにしないでよ〜!!(涙)
「待ってても暇だし先に始めてよーぜ」
『え、あっ…うん!!』
焦りと緊張で返事さえどもってしまった。
黒子君が来るまで私の心臓持つだろうかという不安などお構いなしに、火神君は私をコートの中に誘いいれた。
「んじゃやるか!!」
Tシャツの袖を、肩まで捲り上げた火神君にドキリとしながら、私は火神君の元へと駆けた。
練習をはじめて暫く、私はあることに気付く。
「そうじゃなくて、もっと…こうだ!!」
『こ、こう!?』
「こうだ!!」
火神君は頭でどうこう考えてプレーするタイプではなくて、感覚の人だと。
擬音ばかりの説明で分からない部分が多いけれど、それでも私に分かるように説明しようとしてくれる。そんな彼を可愛いと思いつつ、やっぱり好きだと感じながら、私は火神君の説明を聞いていた。
『だめだ…』
「…パスはいいのにな」
練習してそうすぐスパスパ入るものではないけれど、どうにもこうにもシュートが入らない。なぜだろう。
しかし火神君が言った通り、パスはちゃんと出来るのだ。
火神君の説明が悪いとか、そんなんじゃないのに火神君は少し責任のようなものを感じているようで、腕を組んで唸り始めた。
どうしよう、悪いのは火神君ではなくて、才能もセンスもない私のせいなのに。
いっそのこと私はパスを極めてシュートは他の人に…あ!!そうだよ!!そうすればいいんだよ!!
『火神君!よろしくね!』
特に何かを火神君に言ったわけではない。けれど火神君は何か分かったように私にパスをして、そのままゴールに向かって走り出した。
…今だ!!
『やった!!』
私の放ったパスは見事火神君の手に納まり、そのままゴールへと叩きつけられた。
「ナイスパスミョウジ!!」
シュートを決めた火神君は私の元へ駆け寄ってきて、それから拳を私に突き出した。
人生初、アリウープのパスをだったけど、火神君はそれを決めてくれた。そして火神君が褒めてくれて。
私は少し遠慮がちに拳を合わせた。
「にしてもすげーな!あわせてもねーのに!
俺らって相性いいのかもな!」
太陽を背に火神君は笑顔で私にそう言った。
そういう意味じゃないことは分かってる。でも私の頭は何を都合のいいように変換したのか、顔を真っ赤にした。
すると、火神君にもそれがどういう意味かが分かってしまった様で、私と同じように顔を赤く染めた。
そして何なのかわからない空気が流れた。
どうしよう、何かしゃべらなきゃ!
でも何言ったら良いか分かんない…!!
頭をフル回転させているところに突然だった。
「なぁ…付き合わねーか?」
火神君が何を言ったのか一瞬理解できなかった。
…い、今なんて…
聞き返そうとしたが、それは叶わなかった。
「だー!そうじゃねぇ!!」
まるで自分に言い聞かせるように、火神君は頭をかいた。それから真っ直ぐな目で私を捕らえた。
「お前が好きだ。
だから俺と…付き合ってくれねぇか?」
じわりじわりと、心に染みてくる彼の言葉。
後悔したのは自分が行動を起こした後。嬉しすぎて思わず抱き付いてしまって、慌てて離れようとしたけれどその前に火神君が私の背中に手を回していた。
『わ、私も…!!』
−−−あなたが好きです
風が吹けば消えてしまいそうなほど小さな声だったけれど、彼にはちゃんんと聞こえた様で。
彼は今まで見たな中のどれよりも優しい顔で笑った。−−−
▼おまけ
−−−おまけ
『そういえば黒子君は?』
「…!!あー、えっと、…それは…」
(今日は来ないでくれと頼まれましたが…。火神君ちゃんとやっているでしょうか?)
夢主ちゃんと二人きりになりたくて、黒子に来ないでくれと頼んだ火神であった。
『(じゃあなんで後からくるだなんて…)』
「(…じゃねーと、なんか気まずくなる気がして…)」
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