ファーストコンタクト
---どんっ
---バサバサッ
突然の衝撃で私は持っていた教科書を落とし、ついでに尻餅までついてしまった。
壁はなかったはずなのに、なぜ??
そっとつぶっていた目をあければ黒いズボンがうつる。
はっ!
私、ひとにぶつかったんだ…!
謝らなくちゃと思って、顔をあげたら、考えていたことはすべて吹っ飛んだ。
恐怖
という感情が私を支配したからだ。
か、がみんくん。
火神君はすごい形相で私を上から見下ろしていた。
火神君とはクラスが同じだけど話したことはない。ただバスケ部のエースってことと、授業中はいつも寝てる。
これくらいの情報しかない。
私が固まったままでいると、火神君の腕が上に動いた。
た、たたかれる…!
そう思ってまた目をつぶったけど、痛みはいつまでも襲ってこなくて、そっと目を開けてみれば教科書を左手に持ち、右手を私に差しのべた彼がうつった。
「わりぃ、怪我してねーか?」
『う、うん!大丈夫っ』
大丈夫と伝えるために両手をふるジェスチャーをすれば、その手を捕まれる。
---フワッ
火神君は私を片手で立ち上がらせそのまま教室の方へと歩き出す。
き、教科書は…!?
「これ、教室までもってく」
首だけ後ろに向けた火神君は私の返事を聞く前に足を進めた。
そして呆然と立ち尽くす私。
ふふっといつのまにか頬が緩む。
火神君は私が想像していた人物と全く違っていて本当は優しくて暖かい人なんだなって思った。
背が高くて少し目付きが悪くて睨んでる風に見えるだけなんだって。
これから仲良くなれるかな?
なりたいな。
そう思って私は小走りで火神君の背中を追った。
追い付いたらまず言うんだ。
---ありがとう
って。
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