恋の先の独占欲

【attention!】


・夢小説です。「夢小説ってなに?」という方はブラウザバックです。

・はじめはピュアなカカシ先生ですが、最後らへんからドSが目覚め始めてます

・最後のセリフは読者様のご想像にお任せします←







 オレには好きな女性がいる。
 それはもう可愛い。容姿はなんというか女の子らしいという感じだうか。でもオレが一番可愛いと思っているのは、見た目じゃない。

「おはよう」
「っ……!か、カカシさん……!お、おはようございます……!」

 この反応も勿論だけれど、とにかく声が可愛い。
 トーンは高すぎず低すぎず。でもどちらかといえば高め。声色は静かで落ち着いていながらも、ころころと鈴を転がしたような愛らしい声。子供っぽい可愛らしさもありながら、大人らしい落ち着きもある不思議な声。
 彼女の声を初めて聞いた時は、鼓膜だけではなく胸の奥が熱く震えた。人の声なんて、誰が誰のものか判別する程度のものでしかなかったが、初めて誰かの声に特別な感情を抱いた。
 きっかけは彼女の声であったが、それは本当にきっかけで。彼女の声を聞きたくて自分から話しかけて、会話をしていくうちに彼女という人物を知り、次第に彼女自身を好きになっていった。
 彼女は恥ずかしがりやで人見知りで話すのが苦手だ。男女問わず誰かと話す時は頬や耳を赤く染める。自分にだけ赤くなる、という訳でないから、「自分を好いている」と勘違いしてはならない。しかし、それを知っていても、分かっていても、その相手が想い人となると期待してしまうのも事実である。
 オレは人と線を引いて接していたのもあり、誰かを好きになるとか、そんなものとは無縁の生活をしていた。恋をしている人間は何人も見てきたが、するのは初めてで。恋をしてる人間に対して、生き生きしている、楽しそうな顔をしている、などという感想があったが、当時は理解できなかった。しかし、今なら分かる。
 好きな人のことを考えるのは楽しいし、相手を見るだけで、近くにいるだけで嬉しいと感じてしまう。
 相手とこの先どうなりたいとか、そんな具体的な考えはなかったけれど、相手も自分の事も好きになってくれたらという漠然とした感情を抱いていた。
 そして昨日、想い人から話があると呼び出された。
 何の前触れもなく突然の事で、話の内容は特には伝えられず、自分の中でまさかまさかと期待が膨らんでいく。これは告白されるのではないだろうか。いや、しかし、彼女と年はそう変わらないが、年もオレの方が少し年上だし上忍としてはかなり先輩だから、仕事関係の相談かもしれない。でも、やっぱり……と、考え出せばきりがない。これが恋愛脳というやつなのか、どうしても思考が勝手にそっちへと走っていく。
 これまでの人生で、女性から呼び出される事は度々あった。すっぽかしてずっと待たせてしまうのなら、きっぱりと断るのがせめてもの優しさでオレに出来ることだったから、行くしかなかった。その度に、「またか……」と気が重くなっていたが、今はどうだろう。期待に胸が膨らんでスキップでもしたい気分だった。そんな姿を見られれば、同期には気でも狂ったとかと言われそうだし、気持ちをぐっと堪えて、指定された待ち合わせ場所へと向かった。
 オレは告白されるのかと思っていた。いや、あれは実際に告白だった。しかし、予想していたそれとは違い、オレはしばらくの間放心してしまった。衝撃的すぎて記憶が曖昧になる程に。
 彼女から告げられたその言葉は、昨日の出来事であるというのに、未だ何度もオレの頭の中をこだましている。

ーー「か、カカシさんの声が、その……す、すっ」

 オレが待ち合わせ場所にくるなり、白い肌を真っ赤に染めて、「来てくれてありがとうございます」なんて言われて、俯きながら話し始める彼女に完全に油断していた。その言葉の後には「好きです」と続くのだと、期待してしまった。

ーー「す、すごく……あの、その、…………む、無理なんです!!!だから、私にあまり……話しかけないでください……!!」

 甘酸っぱい空気が一気に凍りついた。甘酸っぱいというのはオレがそう感じただけなのだが。
 なにも返せず沈黙するしかなった。期待していたのもあり、絶望さえ覚える。固まったままのオレに、彼女は珍しく声を荒らげ「失礼します!!!」と言って逃げるようにその場から姿を消した。
 彼女の声が好きだったから、反対に自分の声が無理だと言われてショックが大きい。彼女の声が好きだから、彼女もオレの声を好きになって欲しいなんてことは思っていない。彼女の可愛らしい声が聞きたくて、不自然にならない程度にたくさん話しかけていた。オレは楽しかったし、彼女の声を一杯聞けて幸せだった。しかし、反対に彼女は不快な思いをしていたのかと思うと、耐えられなかった。
 昨日の彼女から告白をされた後のことはあまり覚えていない。その後、どうやって家に帰って、どう朝を迎えたかも。
 しかし、長年体に染み付いた習慣とでもいうべきか、オレは今、上忍待機所の椅子に腰掛け、愛読書を広げている。勿論内容なんて全く頭に入ってこないが。
 初恋は実らないというが、理由が分かった。恋なんてしたことがないから、感情のコントロールがうまく出来ない。右も左も分からないから、相手への配慮が足りず、自分の感情ばかり先走ってしまうのだ。彼女がオレとの会話を嫌がっていることに気が付けなかったように。
 オレは彼女に告白していないし、寧ろ告白をされた訳だが、これは間違いなく失恋である。
 オレは過去女性に告白された際、「せめて自分で気持ちを伝えてこの恋を終えたかった」と言われたことがある。その時はよく分からなかった。フラれるのを分かっていて、どうして自分から傷付くようなことをするのだろうと。しかし、こういうことだったのだと今なら分かる。こんな形で玉砕するなら、ちゃんと自分の言葉で気持ちを伝えて玉砕した方がまだマシである。だが、それはもう出来ない。
 なにも考えられず、ぼんやりと本を眺める。ページが捲られることはなく、頭の中は昨日告げられた彼女の声がこだまするばかりだった。
 そうしてどれくらいが経っただろうか。ふと廊下が騒がしくなった。声からして女性である。

「ちょっとあんた、はたけ上忍にそんなこと言っちゃったの!?」
「笑っちゃいけないんだけど笑える」

 聞き覚えのある声。彼女と仲の良いくノ一の声だった。内容的にオレのことを話していて、しかも昨日の告白のことを。彼女の声はまだ聞こえないが、そこに彼女もいるのではないかと察した。この廊下を通る理由なんて上忍待機所に来る以外ない。窓から飛び出して逃げたい気分になったがどうにも体が動かない。

「声が無理ですって……。大事な言葉が抜けすぎてるでしょ」
「あんなに"カカシさんの声好きすぎて無理……"なんて言ってたのに」
「なんでそれが言えないかな〜」

 思考が停止した。彼女が好き……?オレの声が……?

「っていうか、そもそも"カカシさんの声が好きすぎてドキドキしちゃうからあまり話しかけないでください"っていうために呼び出したのも意味分かんないし」
「そこまで言う予定だったら、普通に好きですって告白すればよかったのに」

 彼女たちの会話に釘付けになっていた。そして、今まで黙っていた彼女が漸く口を開いた。

「だって……カカシさんのこと本当に好きだから、目の前にいるだけでドキドキしちゃって、緊張して、パニックになっちゃって、それで……」
「あ〜あ〜。はたけ上忍の前でもそれくらい素直だったらねぇ」
「正直、あそこまで言っちゃったら今更はたけ上忍にあんたの気持ち弁解しても無理だろうし、もう諦めて次いきな次!」

 何がなんだかよく分からなくて、オレは手に持っていた本を落としていた。それと同時に、彼女と彼女の友人ふたりが上忍待機所の入り口に立っていた。そして彼女と目が合った。三人ともオレの姿を捉えるなり目を大きく見開いていて、オレが待機所にいたことを驚いているのが分かった。彼女に関しては、顔が青くなっている。
 オレは落とした本を拾い上げ、腰のポーチに押し込むなり言った。

「えっと……。彼女、ちょっと借りて良い?」

 ただでさえ狭い待機所は静まり返っているせいでオレの声がよく響いた。
 体をピシリと固まらせる彼女へと歩み寄れば、彼女の友人たちは言った。

「どうぞどうぞ」
「ごゆっくり〜」

 オレは、ふたりに礼を告げ、俯きっぱなしの彼女に声をかけ人気のない屋上へと向かった。
 冷静を装っているが、心の中は彼女への感情がで溢れていて、落ち着かない。彼女とふたりで話すにも何を話そうか。何からどう話そうか。そんなことを考えているとあっという間に目的の場所へとたどり着いた。
 ぴたりと足を止めれば、オレの後ろを歩いていた存在も同じ様に歩みを止めた。くるりと振り返るが目が合うことはなく、彼女は俯いて小さな体を更に小さくしている。
 はじめに、いきなり連れ出してしまったことを謝るが、彼女は固まっていて動かない。そんなことも気にせず、オレは話を切り出した。 

「えぇっと……。さっきの話しは本当……?」

 びくりと肩を揺らし、自身の足元を見つめる彼女を見てはっとした。
 友人との会話をオレに聞かれ、待機所で見せた彼女の反応や表情を見れば、答えはとっくに分かっていた。それなのに、今だ保身に走り、確証を得ようとする自分の女々しさに、なんとも言えない感情が込み上げる。
 片手で頭をガシガシとかき、オレは腹を括った。

「オレも、君の事好き……なんだ……」

 言葉にした瞬間、気持ちが溢れて止まらなくなる。聞かれてもいないのに、彼女の好きなところを並べては伝えた。

「それと……君の声が好き」

 自分でも途中、何を言ったのか覚えていないが、最後にそれを言うと彼女は力が抜けたようにへなへなと座り込んだ。
 慌てて彼女へと駆け寄り、片膝をつき、彼女の様子をうかがった。オレが長い間話しすぎて、貧血を起こしたのかとか、体調不良なのかとか。自分の告白の答えなど気にせず、彼女の体の心配をしていたのだが、彼女の肩に触れようとした時、彼女の耳が真っ赤になっている事に気がついた。
 すると彼女は耳を塞ぐなり、掠れた声で言った。

「もうそれ以上、好き、って言わないでください……」

 全身の血が駆け巡るのを感じ、無意識に俯いたままの彼女の顎を引いて、自分の方へ向けた。
 彼女の潤んだ瞳と目が合う。よく見なくても彼女の顔は真っ赤である。瞬間に自分の中に何かが渦巻いて、彼女の細い手首を掴み、その手を耳から引き剥がした。

「好き……。ねぇ、好き。君が好き」

 "好き"と言葉を重ねる度に、彼女の真っ赤な顔が更に上気していく。戸惑い、焦り、彼女を困らせているのは頭で分かっていても止められない。好きな子ほどいじめたくなると聞いたことがあるがこういう事なのだろうか。初めての感情に自分自身も戸惑っていた。しかし、それでもやめられない。
 ついには、オレから目線を切り、体を小さく丸めると、「もう限界です……勘弁してください……」と呟くように言った。顔は見えないけれど、耳までは隠せず赤いままである。

「可愛い……。好き。ねぇ、君は?」

 教えてくれるまで何回でも好きって言うよ?と言葉を続ければ、彼女は肩を震わせながら言った。

「……好き、で、す……。カカシさん、が、好きです……!」

 全身に彼女の声が響いた気がした。好きな人の好きな声で、直接「好き」だと言われ、心臓がバクバクと暴れだす。胸の奥が熱くて温かい。心は落ち着かないがどこか心地よい不思議な感覚。オレをこんな気持ちにさせられるのはきっと彼女だけだ。そう、彼女だけ。
 それに気が付けば、今まで彼女とこの先どうなりたいか、自然と答えが出た。
 君の笑った顔も、恥ずかしそうに軽く下唇を噛む仕草も、オレが話しかけると真っ赤になってしまう君の耳も、君の声も全部、全部、オレだけのものにしたい。君を独り占めしたい。
 さぁ、この気持ちをどう伝えよう。

「オレも君が好き。だからさ……──」

──オレの言葉に彼女は頷いたのだった。





(おまけ)
「そろそろ戻ろうか」
「……す、すみません。その……」
「……?」
「……こ、腰が」
「抜けた?」
「は、い……」
「オレの声が好きすぎて?」
「っ〜〜!!」
「立てないなら仕方ないよね」
※夢主を正面から抱き上げるカカシ
「っ……!?な、なっ!?このまま戻るんですか!?」
「そっ。赤くなってて可愛い。好きだよ。」
※わざと耳元で甘く囁き夢主をいじめるカカシ
「……あんまり、いじわる、しないでください……」
「(な、に……それ、やばい……)」
キャパオーバーした夢主はカカシの肩に顔を埋めながら消え入りそうな声で呟く。その声にゾクリとするカカシであった……。
「(オレってもしかしてドS……?)」

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