三年という月日はあっという間に過ぎ、とうとう長門お兄ちゃんたちは今日、パパの影分身を倒した。
やったと喜び合う長門おにいちゃんたちを見た後ちらりとパパを見ると、パパも私と同じように私のことを見ていて、目が合うなりお互い頷いた。
ついに来たのだ。
---別れの日が。
「ワシの影分身をやるまでになるとはの・・・」
「どうよ先生!!」
弥彦お兄ちゃんは嬉しそうにこぶしを上に振り上げた。
それからパパは一拍開け、ふっと笑みをこぼしてから言った。
「これで安心して里に帰れる」
「え・・・?」
一瞬雨が止んだと錯覚するほどその場の空気ががらりと変わった。
長門お兄ちゃんたちが動揺しているのは明らかだけど、パパはそれを気にすることなく言葉をつづけた。
「これからはお前たちだけでやっていけ
この三年間良く頑張ったの」
するり、と弥彦お兄ちゃんの目じりから雫が落ちた。
「おっとなくな弥彦
弱虫だと思われるぞ」
少し茶化すようないつもの口調でいったけど、弥彦お兄ちゃんは突っ掛かって来ることはなかった。
パパはみんなに一言ずつ残し、言い終わると3人に背を向けた。
私はしばらくみんなのことを見つめていたけれど、パパに置いて行かれる前にパパの背中を追った。
パパはさようなとは一言も言っていない。
またいつか、平和な世界で会おうと、きっとそういう意味だと思う。
だから私もさようならとは言わない。
駆け足でパパの方に走ろうとした。
「待って・・・!」
『・・・え?』
不意に手首を掴まれ、私は足を止めて振り返ると、破門状の瞳と目があった。
『長門お兄ちゃん・・・?』
薄く空いた唇はふるふる震えていて、何かお言おうとしていたがいつまでも動かず、私は尋ねた。
「平和になったら…
俺たちが平和な世界をつくったらアキラに会いに行くから…」
『えっ…?』
不意に腕を強く引かれ、私は少しバランスを崩したが額にふにゃりと柔らかいものが触れ、ちゅっということをたてて離れた。
何が、起きたの…?
「ごるぁぁああ!!!
長門お前マジで許さん!」
頭の整理が着く前に、私の体は宙に浮き、いつの間にか戻ってきたパパに抱き上げられていた。そしてすぐにものすごいスピードで走り始めた。
瞬きをすればするほどその3人の影はどんどん小さくなり、最後には見えなくなってしまった。
“次あったときはただじゃおかねぇ”とぶつぶつ呟くパパ。“次会ったとき”と、確かにそう言ったパパの本心は分からないけれど、でもきっとパパは“次”があることを信じている。
それともうひとつ
平和な世界を作ってくれると。
私の知らない未来が来ることを
また5人で笑いあえる事を願った。
(次会うときは、晴れた空のしたで)
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